研究課題/領域番号 |
17K07091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
若林 朋子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (20530330)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経発生 |
研究実績の概要 |
本研究ではcollagen XXV/CLAC-Pがアルツハイマー病の病態形成に及ぼす影響ならびに、神経疾患や健康寿命におよぼす生理機能・病的機能の分子レベルでの解明を目指す。 アルツハイマー病のアミロイド形成にcollagen XXVが与える影響について、APP/collagen XXVダブルTgマウス脳を用い、Aβの動態を生化学的に解析した。その結果、TBS可溶画分のAβ42濃度は変化しない一方、脳間質液中Aβ42濃度は有意に低下していた。これより、collagen XXVがAβ蓄積の成熟化を促進する因子であり、アミロイド斑の形状の違いが脳内Aβ動態に影響を与えうる可能性が示唆された。またcollagen XXVの欠損がAD病理に与える影響を検討する目的で、Col25a1flox;Cre-ERTによる誘導性ノックアウトマウス作出を開始した。 神経系におけるcollagen XXVの機能解析においては、シナプスオーガナイザーであるRPTPσ/δとの結合メカニズムの解析を行い、RPTPリガンドであるCSPGの存在により、collagen XXVとの結合が競合的に阻害されることを示した。さらに先天性の脳神経支配異常(CCDD)で報告された変異を有するcollagen XXVについて、コラーゲン構造の不安定化ならびに、in vitroにおけるRPTPとの結合性の有意な低下を明らかにした。 健康な高齢者(Wellderly)のゲノム解析で見出されたアミノ酸置換を伴うcollagen XXV の8つのレアバリアントがもたらす効果の解析については、変異型collagen XXVをHEK293細胞に発現し、一部の変異でウェスタンブロットの泳動度の変化を認めた。Aβ凝集への効果の検討に向け、細胞外領域のリコンビナントタンパク質の精製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Collagen XXVとアルツハイマー病、シナプス機能、神経発生、健康老化との関連という4つの課題について、当該年度に計画していた課題に着手し、それぞれ、脳内Aβ動態への影響、RPTPとの相互作用部位の同定、CCDD変異の効果、ならびにレアバリアントの発現系樹立という目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
Collagen XXVとアルツハイマー病との関連については、生化学的解析により、脳可溶性Aβの分子種の変化をさらに詳細に解析し、またin vivoにおけるアミロイド形成へのcollagen XXVの影響を、Aβシード注入実験ならびに、Col25a1の欠損により解析する。これにより、アミロイド斑形成に対する効果を明らかにし、アルツハイマー病態形成におけるcollagen XXVを標的とした介入法創出につなげていく。 また、神経系におけるcollagen XXVの機能解析については、RPTPσ/δとの相互作用部位や結合の分子機序の更なる解析を進めるとともに、Col25a1の欠損が脳のシナプスならびに神経筋相互作用にもたらす影響を、in vivoで解析する。Collagen XXV のWellderlyレアバリアントによる健康老化への作用については、Aβ凝集に対する各変異の効果をin vitroの評価系を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、シナプス機能、神経発生、健康老化との関連の3つのテーマについては、主にin vitroや培養細胞系を用いた検討を中心に進み、TgやKOマウスを用いたin vivoの解析は平成30年度より本格化することになった。そのため、マウス飼育やin vivo解析に用いる消耗品を中心に計上していた金額については、一部次年度に使用の見込みとなった。
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