研究課題/領域番号 |
17K07095
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
加藤 信介 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60194817)
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研究分担者 |
北尾 慎一郎 鳥取大学, 医学部, 助教 (60724804)
加藤 雅子 鳥取大学, 医学部, 准教授 (80221183)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病新規治療薬 / 非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害剤 / プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害剤 |
研究実績の概要 |
I. アルツハイマー病モデルマウスの病理学的評価システムの確立:ヒトアミロイド変異遺伝子とヒトタウ蛋白変異遺伝子を導入したTg(APPSWE)2576KhaTg(Prnp-MAPT*P301L)JNPL3Hlmc (Tau-APP)マウスにおいて、ヒトアルツハイマー病の病理学的特徴である老人斑と神経原線維変化と同一の構造物が出現していることを確認した。方法論的にはルーチン染色としてのHE・KB染色に加え、老人斑の同定にはヒトAβ40 及びAβ42 に対する抗体を使用し、神経原線維の同定するためにヒトリン酸化タウ蛋白に対する抗体を使用した。 II. 認知症モデルマウスにおける画期的簡易認知障害評価システムの確立:認知症モデルマウスとしてTau-APPマウスを使用し、同腹子マウスを正常対照とした。通常ケージに餌・水箱を設置した(餌ゾーン)。餌ゾーンとは反対の位置にマウス用玩具を設置することによりケージの壁との間に空間を作成した(安心巣穴ゾーン)。マウスの行動を撮影するための解析装置を新たに開発し、マウスの自発的日常行動のみを10分間解析した。行動解析には今回新規開発した解析ソフトを使用し、行動解析の要素としてActivity(活動性)を抽出した。 III. 薬剤投与の確立:1)アルツハイマー病の新規治療薬として非プリン型(np)キサンチン酸化還元酵素阻害剤(XORI)である化学構造式の異なる2種類のTEI-6720 とNC2500。2)対照薬剤としてプリン型(p)XORIであるアロプリノール。3)プラセボとして溶剤であるメチルセルロース(MC)。前述の3種類の薬剤の経口投与を開始できた。投与量に関しては、npXORI及びpXORIともヒト通常投与量の半分量に相当する量:マウス換算量1.3μg/ cm2/dayとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I. アルツハイマー病モデルマウスの病理学的評価システムの確立:生後1年齢のTau-APPマウスの海馬・大脳皮質において、ルーチン染色としてのHE染色・KB染色に加え、ヒトAβ40 及びヒトAβ42 による免疫染色にて、老人斑の同定を確認出来た。また、同年齢のTau-APPマウスの扁桃核・視床下部において、ヒトリン酸化タウ蛋白による免疫染色にて神経原線維の同定を確認出来た。即ち、Tau-APPマウスは病理組織学的にヒトアルツハイマー病モデルマウスと確認できた。 II. 認知症モデルマウスにおける画期的簡易認知障害評価システムの確立:本能刺激ゾーンとして餌ゾーンを、その反対方向にマウスにとっての自然界に存在する安心巣穴ゾーンを作成出来た。Tau-APPマウス群では、餌ゾーンにおいてのActivity(活動性)は正常同腹子マウス群に比べて有意に高く、摂食行動異常と警戒心の低下としてアルツハイマー病マウスの臨床表現型を捉えることに成功した(アルツハイマー病パターン)。安心を与えると想定させる安心巣穴ゾーンでのActivity(活動性)が正常同腹子マウス群ではTau-APPマウス群に比べ有意に高かった(正常パターン)。即ち、危険回避能力・恐怖心の低下と本来身をおくべき空間であるという空間認知障害をアルツハイマー病マウスにおいて同定でき、アルツハイマー病パターンと正常パターンとをわずか10分間で区別できた。 III. 薬剤投与の確立:正常マウスに、1)1.3μg/cm2/dayのTEI-6720及びNC2500(npXORI)。2)1.3μg/ cm2/dayのアロプリノール(pXORI)。3) npXORI及びpXORIと等量のMC。前述の薬剤を1年間投与した結果、当該評価システムにおいては正常パターンを示し、病理解剖した結果は組織学的にも異常を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進基本戦略は、構造式の異なる2種類のnpXORI(TEI-6720, NC2500)をアルツハイマー病モデルマウスであるTau-APPマウスに経口投することにより、当該マウスのアルツハイマー症状抑制の臨床症候学科学的証明を行い、中核的病理像である老人斑(SP)及び神経原線維(NFT) の出現抑制を明らかにする。以下の項目毎に解析してゆく。1)我々が独自に開発した病理組織学的根拠に基づく新規日常行動解析法を実施するより、当該行動解析法からSP・NFT の組織学的出現総数の想定が連日性に可能とする。2)npXORI (TEI-6720, NC2500)、pXOORI(アロプリノール)、プラセボの4 群に分けて経口投与治療実験を、SP・NFT が出現している生後1 年齢の当該マウスに対して実施する。3)npXORIとpXORIは共にXOR が産生する活性酸素生成の阻害効果は存在する。プリンサルベージ回路の基質とならないnpXORIはヒポキサンチンがプリンサルベージ回路を介してIMP となり結果として細胞内にATP を供給するという「プリン代謝的細胞内ATP供給効果」を有すが、pXORIにはATP供給効果はないことを証明する。4) プリン代謝的細胞内ATP供給効果に基づき、npXORIはTau-APPマウスの脳内のSP・NFT の出現総数を抑制することを証明する。pXORIはプラセボと同じ効果しか得られないことも合わせ確認する。
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