孤発性プリオン病や遺伝性プリオン病の剖検脳・全身臓器から、ホルマリン固定サンプルと凍結サンプルを採取・保存した。ホルマリン固定サンプルは、感染性を失活させるためにギ酸処理を施行し、HE染色に加えて複数の抗プリオン蛋白抗体を用いた免疫組織化学的な検討を加えた。一部のプリオン病症例では、中枢神経系のみならず、内分泌臓器や末梢神経、筋組織、皮膚などにおいても異常なプリオン蛋白の沈着がみられた。中枢神経系では、通常neuropilにシナプス型やプラーク型のプリオン蛋白沈着がみられる。しかし、全身臓器においては、細胞内や細胞周囲、一部は末梢神経軸索などにも沈着が同定されており多様性がみられた。下垂体では、主に前葉細胞内にプリオン蛋白の沈着がみられた。成長ホルモン産生細胞に多くのプリオン蛋白の陽性所見が得られた。凍結サンプルからはHomogenateを作成し、一部にはPK処理を施し、western blot にてプリオン蛋白とPK抵抗性プリオン蛋白の検討を行った。PI処理を施行していないサンプルからは、特徴的な糖鎖修飾を持つプリオン蛋白が同定された。PK処理を施行したサンプルでは、多くの症例においてPK抵抗性のプリオン蛋白のシグナルが得られた。また、文献的考察も併せると、内分泌臓器細胞内にみられたプリオン蛋白は、内分泌能に関与する機能を有している事も示唆する。これらは新規の所見である。内分泌臓器におけるプリオン蛋白の詳細な局在を明らかにし、western blotの結果を併せ、現在論文投稿中である。
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