研究課題/領域番号 |
17K07103
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
細井 延武 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90543570)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小脳 / baclofen / 活動依存的 |
研究実績の概要 |
脊髄小脳失調症(SCA)は小脳性の運動失調を生じる遺伝性の神経変性疾患であるが、現在のところ、運動機能を効果的に回復させる治療法が見つかっていない指定難病の希少疾患である。申請者は、既承認薬であり筋弛緩剤として臨床利用されているbaclofen (GABAb受容体の活性化薬)の投与とリハビリ(運動トレーニング)を組み合わせると、SCAモデルマウスの運動機能が有意に改善されることを見出した。このことは、SCAにおいて、運動機能改善を達成するには活動依存的なbaclofenの効果が非常に重要であることを示唆するが、その詳細なメカニズムは不明である。 そこで、本研究では、活動依存的ニューロン標識法を利用し、バクロフェンがSCAマウスに運動機能改善効果をもたらすメカニズムを検討することを目的とした。本年度では、薬剤誘導性遺伝子発現の技術と活動依存的遺伝子発現の技術を組み合わせ、Tamoxifenを投与してその薬剤が体内に存在し、かつ神経活動が生じたときにのみ、マーカーのRFPが安定して発現するという、薬剤による時期特異的かつ活動依存的ニューロン標識法を検討した。Tamoxifen投与と同時に光刺激を与えて神経活動を誘発すると、視覚野の神経細胞に対して活動依存的にRFPをより安定して発現させられることを確認できた。その一方、小脳組織からGFPなどで標識された小脳プルキンエ細胞をFACSで回収する実験手法を試みたがうまく行かなかった。また、SCAマウスの電気生理学的検討を行い、SCAマウスでは野生型に比べてプルキンエ細胞の自発発火が減少している異常を見出した。また、SCAマウスのスライス標本にbaclofenを急性投与して、mGluRシグナリングに対する影響を検討する予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬剤誘導性遺伝子発現と活動依存性遺伝子発現の技術を組み合わせて、活動依存性標識を行った後、安定してマーカーが発現してから実験を行うことが可能になった。 標識されたプルキンエ細胞をFACSで回収する実験はうまく行かなかったが、スライス標本をもちいてプルキンエ細胞からパッチクランプ記録を行い、細胞内液を吸引してmRNAを採取し、発現解析をおこなう予備実験はうまく行った。そのため、計画どおり、活動依存性標識を行った後、マーカーで標識されたプルキンエ細胞の発現解析は十分行えると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤誘導性遺伝子発現と活動依存的遺伝子発現の技術を組み合わせ、活動依存的にプルキンエ細胞群を標識した後に、遺伝子発現解析や電気生理学的解析を行い、バクロフェン投与とリハビリを組み合わせたときに、プルキンエ細胞でどのような変化が生じているのかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、標識されたプルキンエ細胞をFACSを用いて回収することがうまく行かなかったため、遺伝子発現解析などをあまり進めることが出来なかった。しかし、本年度の検討によって、パッチクランプ法を用いて1つのプルキンエ細胞からmRNAを採取し、発現解析を行う手技的準備が整ったので、次年度では、遺伝子発現解析を本格的に行う費用や、電気生理学的解析、免疫染色などによる形態学的解析などの費用に使用する予定である。
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