研究課題/領域番号 |
17K07110
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森田 光洋 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (50297602)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アデノシン / 脳傷害 / ストレス障害 / バイオセンサー / イメージング |
研究実績の概要 |
先行研究において我々は、アデノシンA1受容体とGqi5を安定発現したHEK293細胞を作製しアデノシンセンサー細胞と名付けた。この細胞はアデノシンに対して細胞内カルシウム上昇を示し、脳組織におけるアデノシンの動態、放出経路の解析に有用である。しかし、このカルシウム応答は脱感作が著しく、アデノシン放出の定量的解析が困難であることが問題となっていた。本研究ではカルシウム応答の脱感作に関して、薬理学的、分子生物学的検討を行い、GRKの発現が低いことが知られているCHO細胞を用いることにより、脱感作が少ない改良型アデノシンセンサー細胞を作製した。また、従来のアデノシンセンサー細胞はイメージングにFura2などの色素を用いてきたが、改良型ではRCaMPを用いることにより、色素染色することなく、直接安定してイメージングを行うことが可能となった。さらに、受容体レベルでアデノシンと拮抗するドーパミンについて、同様の方法でセンサー細胞を開発した。これらの手法を用いて、うつ病発症過程を解析するために、モデル動物の検討を行い、コカインの禁断症状を利用した実験系を導入した。具体的にはマウスの飼育、薬物投与、行動を指標とした病態評価などを研究グループ内で確立した。さらに、先行研究において、アデノシン放出に関与することが示されているAQP4, Cav1.2, Cav1.3遺伝子に関し、遺伝子欠損マウス、または子宮内電気穿孔法とゲノム編集を利用した遺伝子破壊の実験系を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1] アデノシンセンサー細胞の改良;予定していた脱感作が少ない細胞を得た。 [2] ドーパミンセンサー細胞の作製;応答が見られる細胞を得ることができた。 [3] うつ病モデルの導入;コカインに対する禁断症状を利用して、病態マウスを作製することができるようになった。 [4] アデノシン放出経路に関与する遺伝子改変マウスなどの導入:AQP4欠損マウスを導入した。Cav1.2, 1.3について子宮内電気穿孔法とゲノム編集を利用して欠損マウスを得ることを決め、必要な実験系を導入した。
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今後の研究の推進方策 |
[1] 新しいセンサー細胞を用いた実験系の確立;改良型アデノシンセンサー細胞およびドーパミンセンサー細胞を用いて、脳スライス標本からのアデノシンまたはドーパミンの放出を定量的に解析する。 [2] 遺伝子改変マウスにおけ病態の解析;AQP4, Cav1.2, Cav1.3の欠損がうつ病および脳傷害の病態に与える影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はアデノシンセンサー細胞の改良と、遺伝子改変マウスの導入を行なったが、これらは校費および、現有の設備及び試薬を利用して行なったため、次年度使用額が生じた。この持ち越された費用は、次に予定されている生理学的検討に利用される予定である。
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