研究課題/領域番号 |
17K07110
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森田 光洋 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (50297602)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アデノシン / うつ / 脳傷害 / アストロサイト / AQP4 |
研究実績の概要 |
神経修飾因子アデノシンに対するバイオセンサーを開発し、精神神経疾患モデル動物由来の脳スライスにおけるアデノシン放出について研究を進めている。これまでに、コカイン中毒に伴ううつ様症状について検討を行い、線条体におけるAQP4依存的なアデノシン放出の増加と、これに関連したドーパミン放出の減少、および前頭前野内側におけるAQP4依存的なアデノシンA1受容体の機能低下を見出している。本年度は、これらに関連した分子レベルの変化、特に線条体におけるAQP4の増加、または前頭前皮質内側におけるA1受容体の減少について検討を行ったが有意な変化は得られていない。これに加えて、本年度は脳傷害の回復過程におけるアデノシン放出について研究を進めた。独自に開発した閉鎖性頭部外傷モデル光傷害マウスでは、傷害4日において白質電気刺激に対する損傷周辺神経細胞のカルシウム上昇が亢進し、その後、活性化アストロサイトと同じ時間経過でカルシウム上昇が正常レベルに戻る。低浸透圧処理に伴うアデノシン放出は、傷害4日において一時的に潜時が増加し、その後正常に戻ったため、神経細胞のカルシウム上昇の亢進に関連してアデノシン放出が減少する可能性が示唆された。アデノシンは神経伝達を抑制する作用があるため、一時的な放出の減少は、興奮毒性やてんかんリスクの増加に関連すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
うつ様行動に伴うAQP4依存的なアデノシンシグナルの変容に関しては、本年度の特別な事情により、担当者が十分な時間を確保することができず、明確な結果を得ることができなかった。これに対し、脳傷害回復過程におけるアデノシン放出の変容に関しては、活性化アストロサイトの集積や電気刺激に対する神経細胞のカルシウム上昇について、ある程度研究が進んでおり、今回の結果により結論に至ることが可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
うつ様行動に伴うアデノシンシグナルの変容と、脳傷害回復過程におけるアデノシンシ放出の変化について、それぞれ投稿論文を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で実験担当者が十分な時間を確保することができず、研究に遅延が生じたため。
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