MIFがマウス神経幹・前駆細胞、ヒトES細胞由来神経幹・前駆細胞、およびヒトグリオーマ幹細胞の細胞増殖を制御することを明らかにしてきた。今回、マウス神経幹・前駆細胞において、MIF下流のシグナルカスケードとして新たに、MIF-CHD7-TPT1-ZFXH4-TBR2を同定した。マウス神経幹・前駆細胞でZFHX4を発現抑制し、RNAシークエンスを行ったところ、Nestinの発現減少やp21の発現増加を認めた。マウス培養神経幹・前駆細胞で、ZFHX4を発現抑制したところ、細胞増殖抑制を見出した。ZFHX4はマウス胎児脳では、ヒト胎児脳と同様に脳室周囲で発現していることが明らかとなった。さらに、ゲノム編集技術(Cas9システム)を用いて、ZFHX4ノックアウトマウスおよびFloxマウスを新たに作製し、胎児脳におけるZFHX4ノックアウトマウスの表現型を解析した結果、マウス胎生15日脳において、ZFHX4ノックアウトマウスでTbr2陽性細胞(中間前駆細胞)数の減少を見出した。この現象は、培養マウス神経幹・前駆細胞において、ZFHX4発現抑制により、Tbr2の遺伝子発現抑制が認められたことに合致する。これらのことは、ZFHX4がマウス胎児脳において、MIF制御下で中間前駆細胞の発現制御を担っていることを示唆している。これらに加え、ZFHX4がグリオーマで高発現することや、ZFHX4高発現患者での全生存期間の短縮をin silicoデータ解析で見出した。以上の結果により、ZFHX4がグリオーマ治療薬開発における新たな分子標的になりうると考えられる。
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