研究課題/領域番号 |
17K07116
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
菅田 浩司 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60508597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / 遺伝学 / ショウジョウバエ / neuroblast |
研究実績の概要 |
20世紀初頭より、一旦発達期を経過すると中枢神経系は新生も再生もしないとするカハールのドグマが提唱されてきたが、1962年のジョセフ・アルトマンによる成体ラット脳における神経新生の報告を契機として、成体における神経新生について複数の研究グループから関連分子や分子機構に関する報告がなされている。分裂休止期にある神経幹細胞が再活性化する生理的な意義や一連の現象を制御している分子機構は今だに解明されていない点が多い。従ってモデル生物を用いてその分子機構を解明することは理想的なアプローチの一つであると考えられる。我々は、ヒトの遺伝子やシグナル伝達経路の多くが進化的に保存されている優れたモデル生物であるショウジョウバエを用いて中枢神経系の発生に関係する遺伝子のスクリーニングを行ってきた。この過程で、脂質代謝酵素の機能欠失型変異体では神経幹細胞の可塑性が変化する表現型を見出した。すなわち、分裂を休止した状態の神経幹細胞がその分裂を再活性化させる際に特徴的な表現型を示す事を見出した。 前年度までに遺伝子欠失型変異体ショウジョウバエの解析で得た現象とその分子機構をより多角的に検証するため、野生型ショウジョウバエの摘出脳に対して薬理学的な操作を加えることで遺伝子変異を模倣する実験系を構築し、解析を進めた。その結果、薬理学的な操作においても変異体と同様の結果を得ることに成功した。一方で、同様の系を用いて再活性化後のタイミングで摘出した脳に対して薬理学的な操作を行っても顕著な作用は認められなかった。この結果は、解析を進めている分子機構が再活性化時の神経幹細胞に特異的であることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に従って実験を遂行できているため。また、本研究の過程で得た知見を現在投稿中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って引き続き解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな仮説の検証を行うために追加でショウジョウバエを購入した。この目的のために40万円の前倒し支払いを受けた。従って、2018年度中に執行した研究費は当初の予定額以上となったが、前倒し支払いされた予算の一部が「次年度使用額」として残る形となったため。上記で発生した次年度使用額は、前倒し請求を行った時点で提出した研究計画に従って執行する。
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