研究課題/領域番号 |
17K07118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 武 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 助教 (60402567)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経細胞 / 軸索 / 細胞骨格 / Spectrin / リン酸化 |
研究実績の概要 |
細胞骨格は建物の鉄骨の様な形態維持の役割を持つだけでなく、動的に様々な細胞機能に関わる。神経細胞の軸索遠位部には規則的に並んだ格子状細胞骨格が膜直下に構築されていることが2013年に超高解像度顕微鏡を用いた観察から新たに発見された。この構造は軸索特異的な構造であり、軸索先端から形成されることが知られている。しかし、軸索遠位部構造がどのような分子機構で形成されるのか理解されていない。申請者は、軸索先端で活性化されている蛋白質リン酸化酵素Cdk5および軸索遠位部骨格分子αII-spectrinに着目し、Cdk5がαII-spectrinをリン酸化することを見出した。本研究の目的は、Cdk5とαII-spectrinを足がかりにして、軸索遠位部に特異的な細胞骨格を形成する分子機構を解き明かすことである。 平成29年度は、Cdk5によるαII-spectrinのリン酸化部位の同定するためにin vitroキナーゼアッセイを行った。アッセイ後、質量分析法によりαII-spectrinのリン酸化部位の候補を複数得た。リン酸化候補部位のセリン/スレオニンをアラニンに置換したαII-spectrin変異体を作製した。この変異体を用いてin vitroキナーゼアッセイを行った後、放射性同位体を用いない手法であるPhos-tagを用いたSDS-PAGEでサンプルを分離し銀染色を行ったが、リン酸化部位の同定に至らなかった。次に放射性同位体32Pを用いて実験を行うために準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
αII-spectrinのリン酸化部位を同定し、リン酸化を特異的に認識する抗体の作製を作製予定であったが、リン酸化部位の絞り込みまでは行うことが出来たが同定に至らなかったため。放射性同位体を用いない手法でαII-spectrinのリン酸化部位を同定しようと試みたが良い結果が得られなかったので、次は放射性同位体32Pを用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
αII-spectrinのリン酸化部位の同定し、リン酸化部位特異的抗体を作製する。αII-spectrinのリン酸化模倣変異体または非リン酸化型変異体を用いてKIF3/KAP3とのin vitro結合実験を行い、リン酸化がαII-spectrinとKIF3/KAP3の結合に与える影響を測定する。キナーゼ阻害剤を用いて軸索遠位部構造の形成が阻害されるか超高解像度顕微鏡を用いて観察する。αII-spectrinノックアウトマウスと非リン酸化型αII-spectrin変異体を用いてαII-spectrinのリン酸化が軸索遠位部構造の形成に必須であることを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は新たな所属機関におけるラジオアイソトープ従事者登録を行おうとしたが、研究科設立以降初めての登録者であったために手続きが遅れた。手続き中の期間に放射性同位体を用いない手法でαII-spectrinのリン酸化部位を同定しようと試みたが良い結果が得られなかった。ラジオアイソトープ従事者登録が完了したために、次は放射性同位体32Pを用いてαII-spectrinのリン酸化部位を同定する予定である。
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