自閉症と統合失調症,その他精神神経疾患と相関する染色体領域15q25.2-25.3領域の個体レベルの解析を行うとともに,精神疾患症状に共通して認められる表現型,ネットワーク,パスウェイを同定する為,新規の染色体改変マウス,細胞の作製を行い,解析を実施した. 特に15q25.2-25.3欠失モデルマウスは,難病指定を受けているGalloway-Mowat症候群(OMIM #251300)との遺伝的相関が報告された事から,神経精神疾患に付随する顕著な表現型でもある腎糸球体(糸球体硬化症)との関係を解析した.発達過程にあるマウスでは異常が認められなかったが,特に雄成体変異マウスの腎臓においては対照マウスに比べ顕著な萎縮を認めた.現在,引き続き腎臓組織切片を用いて表現型を詳細に解析中である. 新規染色体改変精神疾患モデルマウスの作製に関しては,引き続き15番染色体に着目しモデルマウスの作製を試みた.その一つはa7ニコチン受容体遺伝子(CHRNA7)を含む15q13領域,もう一つは15q11-13領域に含まれるGABA受容体クラスター(GABRB3遺伝子~GABRG3遺伝子間)である.それぞれのマウス作製には,変異ES細胞を用いた胚盤胞インジェクション,CRISPR/Cas9のシステムを用いダイレクトに受精卵にインジェクションし,受精卵内でゲノム編集を行いそれぞれ染色体改変マウスを得た.現在,15q13マウスの行動バッテリー解析を完了した.15q25.2-25.3変異マウスと同様,吸入によりてんかん発作を惹起可能なflurothylを用い『てんかん』に関する薬理試験を行った結果,雄雌ともにヘテロマウスでは頻度が上昇する傾向が認められた.一方,ホモ欠失マウスでは有意な上昇を認めた.一方,その他大部分の行動テストにおいては顕著な表現型が認められないが,社会性のドメインで障害を認めた.
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