研究実績の概要 |
Arc (activity-regulated-cytoskeletal protein)は,神経活動依存的に神経細胞に発現する遺伝子として知られており(Neuron 14(2):433-45,1995)、その遺伝子産物はグルタミン酸受容体のシナプス膜への発現を調節する(Neuron 52(3):445-59, 2006)。ArcはLTP(long-term potentiation、シナプス長期増強)やLTD(long-term depression、シナプス長期抑圧)、また、空間学習課題や恐怖条件付けなどの刺激により興奮性ニューロンに誘導される(Neuron 52(3):437-44, 2006;J Neurosci 28(47): 12383-12395, 2008) 。海馬初代培養ニューロンをArc抗体を用いて免疫染色し、樹状突起におけるArcの染色輝度を比較したが、野生型、およびTsc2ヘテロマウスにおいて有意な差は見出せなかった。そこで、野生型およびTsc2ヘテロマウスそれぞれの海馬初代培養ニューロンに対して、mGluアゴニスト(DHPG)を投与した群、投与しなかった群に分けArc染色輝度を比較したところ、野生型においては、無刺激と比較してDHPG投与群においてArcの輝度が有意に増加した。一方、Tsc2ヘテロにおいては、輝度の差はみられなかった。以上の結果から、tsc2ヘテロ条件下における、mGluR依存的なArc発現の異常が、結節性硬化症にみられる行動異常に関与している可能性が考えらえた。
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