研究実績の概要 |
研究代表者はショウジョウバエの脳を摘出し、匂い記憶神経細胞の活動性をイメージング解析する実験系を開発し((Ueno et al., J. Physiol. 2013)、この実験系により匂い記憶神経の記憶様神経可塑性がドパミンによって引き起こされること、さらにそのドパミン放出がドパミンの受け手である匂い記憶神経細胞そのものの活動性によって調節されていることを見出した(Ueno et al., ELife 2017)。 この匂い記憶神経細胞によるドパミン放出は局所的に引き起こされることから、何らかの逆行性シグナルが関与するのではないかという仮説のもと、薬理学的・遺伝学的な解析を行った。その結果、記憶神経細胞からの一酸化炭素が重要な働きをしていることを示唆する結果を得た。さらに、遊離した一酸化炭素がドパミン作動性神経のリアノジン受容体を活性化させること、さらにリアノジン受容体によって増大するCa2+濃度がドパミンを放出させる実験結果を得た。これらのドパミン放出に関する実験結果は全てドパミン作動性神経におけるシナプス小胞の開口放出を検出する蛍光プローブ(synapto-pHluorin)によって行ったものであった。しかし、ドパミン作動性神経からはドパミン以外の神経伝達物質も放出されることが知られており、真にドパミンが一酸化炭素・リアノジン受容体によって放出されているのかは不明であった。近年、細胞外ドパミンを直接観察することのできる蛍光プローブが開発された(Sun et al., Cell 2018)。このプローブを入手し、上記の結果が確認できるか否かを検討した。その結果、開口放出で見られた結果と概ね同様の結果を得ることができた。これらの結果を総括し、論文発表を行った(Ueno et al., J. Neurosci. 2020)。
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