研究課題
緑内障は我が国における最大の中途失明原因であり、加齢に伴い発症率が増加する。緑内障の原因は主に眼圧の上昇であるが、特に日本においては眼圧上昇が見られない「正常眼圧緑内障」が緑内障患者の約7割を示す特徴があり、眼圧以外の要因の解明とそれらをターゲットとした治療法が求められている。我々は緑内障の発症要因の一つとして考えられている、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸に注目した。緑内障は視神経軸索が障害を受け、その細胞体である網膜神経節細胞(RGC)が死に至ることで視野障害が起きる神経変性疾患である。RGCには約40種類のsubtypeが存在することがわかっており、近年では耐性の高いsubtypeとして最も大型のαRGCやmelanopsin陽性の内因性光感受性RGC(ipRGC)が注目されている。そこで我々はαRGCとipRGCがグルタミン酸毒性に対しても同様の耐性を示すか検討した。これには、グルタミン酸受容体を活性化させるN-methyl-D-aspartate(NMDA)をマウスの眼球内に投与してRGC死を誘導するモデル、および正常眼圧緑内障モデル(グルタミン酸輸送体であるGLASTの欠損マウス)においての αRGCとipRGCの生存率を検討した。両病態モデルのフラットマウント網膜においてRBPMS抗体(全体RGCマーカー)、オステオポンチン抗体(αRGCマーカー)とメラノプシン抗体(ipRGCマーカー)を用いて免疫染色によりRGC死の解析を行なった結果、全体のRGCは約半数が減少するが、αRGCとipRGCは網膜の中心部位、中間部位、外側部位それぞれにおいて、90%以上の高い生存率を示した。この2つの細胞種における高耐性の理由を解明することで、緑内障で通常死に至るRGCの生存率をあげられれば、新たな治療研究に貢献する可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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