研究課題/領域番号 |
17K07127
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
宮本 幸 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (50425708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミエリン / オリゴデンドロサイト / 共培養 / ミエリン変性症 |
研究実績の概要 |
本年度は、中枢ミエリン形成過程の分子メカニズムを解明するため、オリゴデンドロサイトの発生期に特異的に発現している分子のmRNAアレイ解析を行い、候補分子の絞り込みを行った。その結果、これまで報告のなかった細胞内シグナル伝達経路の中心で働くヌクレオチド交換因子活性依存性のタンパク質が特異的に高発現していることを見いだした(未発表)。現在、その分子が中枢ミエリン発生過程の制御にどのように関与しているか、in vivo、in vitroの両面から解析を行う準備をしている。さらに、そのシグナルタンパク質の周辺分子を明らかにするため、タグをコードする塩基配列を付加し、これをオリゴデンドロサイト内に発現させ、タグ抗体で免疫沈降したのち、結合タンパク質のMS解析を行った。現在も引き続き解析を継続している。 一方、先天性中枢ミエリン変性症であるPelizeus-Merzbacher病の原因遺伝子として、近年plp1以外にも複数の遺伝子が明らかにされ、総称としてHypomyelinating leukidystrophy (HLD) と呼ばれるようになってきた。本年度は、HLD4およびHLD6に焦点をしぼり、そのモデル作製などに着手した。さらに、HLDを模倣するインビボマウスモデル作製のため、HLD4の原因遺伝子であるHSPD1の点変異体のトランスジェニックマウスを作製した。まず、目的とするものを主要な病変細胞であるオリゴデンドロサイトに特異的に発現させるプロモーター下流に配置した。点変異体としては、HSPD1の29番目のAspをGlyに置換したHSPD1(D29G)を用いた。作製したトランスジェニックマウスの新生児の脳を固定後切片を作り、抗MBP抗体で免疫染色を行ったところ、同腹の野生型マウスと比較し、トランスジェニックマウスの脳梁や嗅球などの領域において髄鞘形成率の減少が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミエリン発生の分子メカニズムの解明においては、マイクロアレイ解析や質量分析法などを用いて、発生時期を制御する候補分子の絞り込みを行い、ミエリン発生期に中心的に機能することが予想される新規シグナル分子の同定に至った。一方、ミエリン変性症の研究においては、先天性白質形成不全症のHLDに関して、インビボモデルマウスの作製に着手し、表現型として髄鞘形成率の減少が確認されるマウスを得ることに成功した。さらにインビボ病態共培養システムの構築と、病態メカニズムの解明も継続して進めている。このように、本年度は当初の計画に沿って概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、オリゴデンドロサイトの発生各時期に特異的に発現している分子を明らかにするため、mRNAアレイ解析を行い、候補分子の絞り込みを行った。その結果、これまで報告のなかったガイダンス因子受容体や細胞内シグナル伝達経路の中心で働くヌクレオチド交換因子活性依存性のタンパク質などが特異的に高発現していることを見いだした。今後はそれらの分子が中枢ミエリン発生過程の制御にどのように関与しているか、in vitro、in vivoの両面から解析を行い、グリア細胞と神経細胞の共培養系に還元しその効果を検証する。さらに、その分子周辺に介在するシグナル分子を明らかにし、ミエリン発生シグナルの全貌を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたmRNAアレイ解析の外注費用を最低限に抑えられたこと、また共培養に用いる動物経費も最小匹数に抑えて実験を進めたこと、さらに人件費も極力抑えたことで、次年度使用額が生じた。
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