研究課題
上皮性卵巣癌は最も死亡率の高い婦人科悪性腫瘍であるが,その発生母地が不明なこと,病態の解析に相応しい動物モデルがないことが診断・治療法の開発の障害であった。近年,上皮性卵巣癌の発生母地が卵巣上皮から卵管上皮(内癌)へパラダイムシフトしつつあり,申請者が樹立した雌性生殖器で腫瘍を形成するトランスジェニックマウスが有用なモデルとして評価されている。しかし,同マウスは,子宮・膣も腫瘍化するため人道的エンドポイントまでの卵巣癌発症率が低い(56%)。本研究では,卵管上皮細胞特異的に発癌・可視化する新規遺伝子組換えマウスを作製し,卵巣癌のがん化初期の分子機構を明らかにすると共に,診断・治療の標的分子やマーカーの探索研究に応用する。今年度は,以下の項目について研究を実施した。1)mOGPTag-IRES-EGFPトランスジェニックマウスの作製:実績があるmOGP遺伝子の発現制御領域の長さを変え,その下流にTagおよびEGFPをIRESを介してバイシストロニックに発現する遺伝子を作製・導入し,特異的に卵管上皮細胞に発現し,腫瘍化・可視化する遺伝子組換えマウス系統を樹立する。発現制御領域を調整することにより,卵管上皮での発現特異性の向上とともに,発現量の異なる系統の確立を試みた。2)我々が作製したmOGPTagマウスは,エストロゲン依存的に雌性生殖器で腫瘍を発生する一方,オスの甲状腺や前立腺等も腫瘍化することから,mOGPが卵管以外の組織での発現が示唆された。野生型マウスを用いて,改めてmOGP遺伝子発現の組織特異性及びエストロゲン依存性を検証した。3)mOGP:Tag-IRES-EGFPノックインマウスの作製:CRIPR/Cas9システムを用いて,mOGP遺伝子内にTag-IRES-EGFPをノックインしたゲノム編集マウスの作出を試みた。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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