DNAメチル化やヒストン修飾などエピゲノムの定量的かつゲノムワイドな解析により、がんや精神疾患等においてエピゲノムの変異が明らかとなっており、これら疾患とエピゲノム変異との関連性が示唆されている。しかし、これまでの報告ではエピゲノム変異の同定に留まっており、モデル動物を作製し疾患との因果関係を明確に示すには至っていない。上記を明らかにし、エピゲノム疾患を理解するためにはエピゲノム変異を動物個体に導入し、モデル動物を作製することが必須である。そのため本研究は、(1)個体レベルで標的領域のエピゲノムをON/OFF制御可能な統合的エピゲノム制御システムを開発すること、(2)開発したシステムを保有する遺伝子改変マウスを作製し、エピゲノム疾患モデルマウスを作製することを目的としている。平成29年度は、CRISPRゲノム編集技術を基盤とした統合的エピゲノム制御システムの構築を検討した。エピゲノム[ON]システムとして、遺伝子発現の促進(ON)に働くエピゲノム修飾酵素あるいはその足場タンパク質とdCpf1との融合タンパク質を発現するベクターを作製した。エピゲノム[OFF]システムとして、遺伝子発現の抑制(OFF)に働くエピゲノム修飾酵素あるいはその足場タンパク質とdCas9との融合タンパク質及びガイドRNAとエピゲノム修飾酵素足場RNAとの融合RNAを発現するベクターを作製した。現在、培養細胞を用いて、これらベクターの効果について検討している。
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