研究課題/領域番号 |
17K07132
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小沢 学 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80608787)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 精子形成 / 精原細胞 / 精原幹細胞 / 精巣 / ヒストン |
研究実績の概要 |
哺乳動物の生殖細胞の発生過程において、ヒストンのエピジェネティックな修飾が著しく変動することが知られている。我々はヒストンH3K4/H3K36の脱メチル化 酵素であるFbxl11の精子形成における機能を明らかにすることを目的として、生殖細胞特異的Fbxl11 KO (Fbxl11 cKO)マウスを作成しその解析を行った。その結果 、Fbxl11 cKOマウスの精巣上体には精子形成がほとんど存在せず、精子形成に重篤な異常が生じていることが明らかになった。Fbxl11 cKOマウスの精原細胞の遺伝子発現をマイクロアレイで解析したところ、精子形成や減数分裂に関与する遺伝子群の発現が有意に低下していた。また、H3K4me3特異的抗体を用いた Fbxl11 cKO精原細胞のChIP-seq解析を行ったところ、広範なゲノム領域においてH3K4me3の亢進が起こっていた。さらに、ChIP-seqとマイクロアレイ解析で共通して変動する遺伝子群の中から、精原細胞の分化に重要な役割を果たすことが知られているmTORCのシグ ナルに着目して解析を行ったところ、Fbxl11 cKO精原細胞 ではmTORCの抑制因子であるREDD1の発現亢進ならびにmTORC活性の低下が起こっていること、およびRedd1遺伝子のプロモーター領域でH3K4のメチル化が亢進して いることを明らかにした。このことから、Fbxl11欠損に起因した精子形成不全は、mTORCの抑制による精原細胞の分化異常によることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの交配やサンプリングが予定通り進み、これまでに1年目に計画をしていた精原細胞の培養系の確立と、Fbxl11欠損精原細胞の自己複製能および分化能についての解析を終え、2年目に計画をしているChIP-seqのうちH3K4のゲノムワイドの修飾パターンの解析まで終えている。2年目に計画をしている残りのChIP-seqとRNA-seqについても、既に解析に向けたサンプル調製を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に書いたとおり、H30年度にRNA-seq およびChIP-seq を行うことでFbxl11 欠損に起因したトランスクリプトームの変化、ならびにゲノム上へのFbxl11の結合パターンとH3K4およびH3K36のメチル化パターンの変動を明らかにする。さらに、H29・H30年度に得られたデータをもとにしてH31年度には遺伝子改変技術を駆使することで精原幹細胞におけるFbxl11の標的候補遺伝子を実証的に探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は最も費用がかかると予想される次世代シーケンサー解析については、サンプリングを主に行い解析は2検体しなかったため、当初申請金額よりも少額の仕様となった。それらのサンプルは2年目である本年度にまとめて解析を行う計画である。
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