今後の研究の推進方策 |
(1)29年度から継続して作製したRnf123欠失系統と2種の対照系統に対してネズミマラリア原虫の感染実験を行い、感染後の血虫率(感染赤血球数/全赤血球数)と生死を測定することで感染初期における原虫の増殖性と生存率の変化を明らかにして、Rnf123遺伝子のマラリア原虫増殖抑制機構への関与を解析する。同様に、Rnf123欠失個体と対照系統(NC系統とNC.129X1-Pymr系統)個体について、血球計数装置で赤血球数、ヘマトクリット値、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球粒度分布幅等を測定し、Rnf123遺伝子の赤血球性状への作用を解析する。更に、骨髄や赤芽球で特異的に発現する遺伝子群の発現量の解析を行い、発現量の変化と赤血球の性質との関連性を調査する。 (2)Rnf123遺伝子の発現量を制御している変異を同定するために、感受性系統(A/J, C3H, NC)と抵抗性系統(C57BL/6J, CBA, 129X1)間でRnf123遺伝子の塩基配列の比較を行い、発現量を制御している可能性がある候補変異を抽出する。更に、(1)の解析でRnf123がマラリア原虫増殖抑制に関与していることが判明したら、抽出した候補変異をCRISPR/Cas9システムによりNC系統に導入した個体を作製し、Rnf123遺伝子の発現量の変化(低下)を確認する事で原因変異を特定する。 (3)Rnf123遺伝子のみでマラリア原虫の増殖抑制が説明できない場合は、Char1/Pymr領域内に存在する約70個の遺伝子のうち、その産物が赤血球内に存在し機能が明らかにされていない他の候補遺伝子(Apeh, Actl11, Gmppb)についてRnf123遺伝子の場合と同様にゲノム編集技術で欠損マウスを作製して解析を行う。
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