研究課題/領域番号 |
17K07135
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成瀬 智恵 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30372486)
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研究分担者 |
浅野 雅秀 京都大学, 医学研究科, 教授 (50251450)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | β4GalT1 / マウス / 造血幹細胞 / ホーミング |
研究実績の概要 |
我々は前年度までに,β4ガラクトシルトランスフェラーゼ-1ノックアウト(β4GalT-1-/-)骨髄由来造血幹細胞が,レシピエントマウスの骨髄に生着できないことを,コロニー形成アッセイなどで明らかにしてきたが,本年度はさらに直接的に観察するために,レシピエントマウスの大腿骨の切片を作製して解析を行なった。移植24時間後に観察した結果,骨髄への生着がβ4GalT-1-/-/CAGGFP造血幹細胞は,β4GalT-1+/-/CAGGFPに比べて約1/5に低下していた。また,造血幹細胞は胎仔期には肝臓に存在することから,胎仔性β4GalT-1-/-造血幹細胞が野生型マウスに生着するかどうかを解析した。β4GalT1+/-胚およびβ4GalT1-/-胚より肝臓を回収し,放射線を致死量照射したC57BL/6野生型マウスに静脈投与した結果,β4GalT1+/-細胞を移植されたマウスはほとんどが2週間以上生存したが,β4GalT1-/-細胞を移植されたマウスは,移植されなかった対照群同様,全て10日以内に死亡した。さらに,レシピエントの骨髄への24時間後のホーミングをコロニー形成アッセイにより調べたところ,β4GalT-1-/-胎仔肝細胞は約1/5に低下していた。一方,胎仔の肝臓に含まれる造血幹細胞数をコロニー形成アッセイにより調べたところ,β4GalT-1-/-肝臓にむしろ多く含まれることから,胎仔性β4GalT1-/-造血幹細胞も,成体同様,移植後生着できないことがわかった。さらに,β4GalT1-/-骨髄細胞の分化状態を,フローサイトメーターを用いて解析した。多能性前駆細胞数はβ4GalT-1-/-骨髄細胞において若干増加していたが,造血幹細胞数はコントロールと差が認められなかった。よって,β4GalT-1は造血幹細胞の数や増殖能には関与せず,ホーミングに必須であろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成体および胎仔性造血幹細胞の両者とも,放射線を致死量照射したC57BL/6野生型マウスに移植後,ホーミングと生着が顕著に低下することを明確に示すことができた。また,これらの成果をまとめてScientific Reports(Takagaki et al. 2019, in press)に報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
β4GalT1による糖鎖付加が無くなると造血幹細胞がホーミングできなくなる原因を追求する。β4GalT1-/-と野生型造血幹細胞の細胞膜分子における糖鎖付加状態を比較して,糖鎖付加が異なっている分子を同定する。また,それらの分子の糖鎖付加部位に変異を導入したマウスを作成してホーミングができなくなるかどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスへの静脈注射の手法を改善した結果,使用するマウスの頭数および細胞調整の試薬を節約することができ,実験を効率よく進めることができたため,次年度使用額が生じた。
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