研究課題
昨年度までの研究により、β4-ガラクトース転移酵素(β4GalT)-1を欠損した骨髄由来造血幹細胞は、移植後にレシピエントマウスの骨髄に生着できないことを様々な方法で明らかにし、論文として発表した(Takagaki, et al, Scientific Reports 9: 7133, 2019)。一方、β4GalT-1欠損マウスにおいて、骨髄における造血幹細胞の数やコロニー形成能は正常であったが、次の分化段階である、造血前駆細胞への分化に異常が見られた。フローサイトメーターを用いて解析した結果、β4GalT-1欠損マウスの骨髄ではコントロールマウスと比較して、MPP(多能性前駆細胞)は約3倍に増加していたが、MEP(巨核球・赤血球前駆細胞)とCLP(共通リンパ球前駆細胞)は約半分に減少していた。このことから、β4GalT-1欠損マウスにおいてミエロイド系やリンパ球系の前駆細胞への分化に異常があることがわかった。そこで、末梢血での血小板、赤血球、リンパ球の数について2ヶ月、6ヶ月、10ヶ月と、月齢を追って調べた。まだ予備的な結果であるが、月齢を追うごとにβ4GalT-1欠損マウスの血小板と赤血球の数が顕著に減少していた。したがって、β4GalT-1欠損マウスでは、血小板、赤血球への分化にも異常があることがわかった。この結果はβ4GalT-1欠損マウスが貧血を示すという我々の以前の報告(Asano, et al, Blood, 2003)と合致するものであり、β4GalT-1が造血幹細胞の正常な分化に必須であることが示された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 7133
10.1038/s41598-019-43551-6