研究課題
若齢ウサギにおける過排卵誘起の条件検討を行った。まず、妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)投与による週齢の影響を確認した。8-20週齢のJWウサギにPMSGを投与して過排卵を誘起し、PMSG投与日を1日目として4日目もしくは5日目にヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与して排卵を誘起した。翌日、卵管灌流により未受精卵を回収し、回収卵子数を計測した。その結果、12-14週齢時が最も回収卵子数が多く、一匹当たりの平均卵子数は約100個(最大236個)であった。これは、通常過排卵処置を行う20週齢以降(平均約30個)に比べ約3倍の回収数であった。また、hCGの投与の時期による影響ついて、13-14週齢時でPMSG投与後4日目と5日目を比較したところ、PMSG投与5日目の回収卵子数がやや多い傾向が観察されたが、統計学的に有意な差は認められなかった。卵子の形態観察では、10-14週齢(未性成熟)と20週齢(性成熟後)から回収した卵子で特に形態的な差は認められず、いずれも1個の極体も観察されることから成熟卵子の状態であると思われた。次に、未成熟ウサギから回収した卵子の受精能を確認するため、体外受精を行った。成熟雄から精子を採取し、BOメディウムで約13時間の前培養後に12-14週齢および20-23週齢のウサギから採取した卵子と媒精し、翌日に分割した卵子を受精卵として受精率を算出した。その結果、現在のところ、約5-7割の受精率が得られている。今後、さらに体外受精の条件を検討し、例数を増やして検討を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに進行しており、成果も得られている。今のところ問題となることは生じていない。
H29年度に引き続き、若齢ウサギにおける過排卵誘起の条件検討、若齢ウサギから得られた未受精卵の体外受精の条件検討を実施し、H30年度中にこれらの検討を完了させる。完了次第、内視鏡を用いた胚移植技術の確立に関する検討を開始する。ヒト関節用内視鏡システムを使用し、麻酔下で腹腔内に内視鏡を挿入、経チューブ的に胚を卵管采から移植する手順を確立し、従来法(開腹手術)と内視鏡を用いた胚移植法間で、胚移植後の妊娠率、産子数を比較検討する。予定以上に検討が進んだ場合、すでに系統維持・保存のため保管されている凍結精子の効率的な利用を考えて、凍結精子を用いた体外受精の条件についても検討を実施したい。また、体外受精後の初期胚での凍結成績の向上についても検討を行いたい。これには、我々がウサギで確立した超急速凍結法(論文投稿準備中)の応用を試みる予定である。
定価からの差額等による少額の端数が生じた。少額であることから、無理に調整せず、次年度助成金と合わせ計画通り執行を行う予定である。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.
巻: 37 ページ: 1282-1289
10.1161/ATVBAHA.117.309139
http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=2