研究課題
平成30年度は、体外受精のための条件検討を行った。若齢(12-14週齢)および成熟(20-23週齢)ウサギから採取した卵子に成熟雄から精子を採取し、BOメディウムもしくはHTFメディウムを基礎とした修正メディウムで前培養した精子を媒精し、翌日に分割した卵子を受精卵として受精率を算出した。これまでの成績では、媒精24時間後の卵子の分割率は成熟ウサギ由来卵子で63.8%、若齢ウサギ由来卵子で42.2%であった(1実験群で188~259個の卵子を使用)。さらに144時間培養後の胚盤胞への発生率は、成熟ウサギ由来卵子で17.6%、若齢ウサギ由来卵子で4.2%であった。体外受精の検討においては、前培養時間の検討やこれまで他の動物種において報告のある様々な薬剤の精子前培養用メディウムへの添加を試みたが、有意な改善効果は確認できず、現時点の体外受精の条件では実用的な成績とは言えない。今後もさらなる条件確立のための検討が必要であると考えられた。また、体外受精の成績も成熟ウサギに比較して若齢ウサギにおいて低い傾向が観察されたことから、過排卵処置に用いるホルモンの比較(妊馬血清性ゴナドトロピンと卵胞刺激ホルモン、今回の検討では前者を使用)や、顕微授精による受精率・胚発生率、さらには人工授精後の回収卵子数・受精卵子数による評価を追加するなど、若齢ウサギ由来の卵子の質の評価については、複数の実験系による、より正確な評価を行う必要があると考えられた。
4: 遅れている
体外受精の条件検討の確立が計画通り進んでいない。条件検討については、試行錯誤での検討となることから計画通りに進まないことが想定されるが、好条件を見出すことが当初の想定よりも困難であり、さらに時間を要すると考えられる。また、体外受精による卵子の質の評価で、未成熟ウサギ由来卵子が成熟ウサギ由来卵子よりも成績が低い傾向が見られたことから、さらに追加実験を行い複数の評価法を用いて、より正確に評価する必要性が生じたため。
体外受精による成績が低いことから、さらなる条件検討を継続し、成績向上を目指す。また、平成30年度に行った体外受精の実験で、若齢ウサギにおいて、体外受精後の受精率および発生率が成熟ウサギに比較して低い傾向が観察されていることから、過排卵に用いるホルモンの比較や、顕微授精ならびに人工授精後の受精率あるいは受精胚の回収の実験も追加し、若齢ウサギ由来の卵子の質について複数の実験系による評価を行う。さらに、内視鏡を用いた胚移植技術の確立に関する検討も進める。ヒト関節用内視鏡システムを使用し、麻酔下で腹腔内に内視鏡を挿入、経チューブ的に胚を卵管采から移植する手順を確立し、従来法(開腹手術)と内視鏡を用いた胚移植法間で、胚移植後の妊娠率、産子数を比較検討する。
定価からの差額等による少額の端数が生じた。少額であることから、無理に調整せず、次年度助成金と合わせ計画通り執行を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Epigenetics & Chromatin
巻: 11 ページ: 28
10.1186/s13072-018-0200-6
九州実験動物雑誌
巻: 34 ページ: 15-22
http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=2