研究課題/領域番号 |
17K07140
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岡田 浩典 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (80416271)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | rAAV / 哺乳動物用複製起点 |
研究実績の概要 |
発生工学的手法による遺伝子改変個体の作出は、非ヒト霊長類などでは非常にコストが高く、希少疾患に対応するのが難しい。一方で、アデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を用いた遺伝子導入による病態の誘導であれば低コストであるが、標的が非分裂細胞に限定される。これらの問題を解決すべく、申請者は本研究において、哺乳動物細胞へ感染した後に、宿主の細胞分裂に同期して複製されるゲノムを有する新規rAAV を開発を進めている。これにより、個体レベルで体性幹細胞の遺伝子発現を制御する技術を確立しつつ、希少疾患のモデルを霊長類を含めた多様な実験動物で作出できるよう貢献することを目的としている。実際には、環状変異体rAAV ゲノムに哺乳動物細胞の複製起点であるヒトIFNb 遺伝子のS/MAR 領域を持たせ、感染した宿主動物細胞の分裂に同期して複製させるコンストラクトを構築した。プラスミドとしてpUC系の複製起点を有し、大腸菌にトランスフォームすることにより増幅させ、またrAAVとしてパッケージングする際には不必要なpUC複製起点をミニサークル化により削除することにも成功している。ただし、哺乳動物用の複製起点となるヒトIFNb 遺伝子のS/MAR 領域がpUC系の大腸菌内において複雑な構造を取るためにプラスミド同士でリコンビネーションを起こしてしまうようであり、この点に対する対処を現在進めているところである。対処法として2種類の手段を考慮しており、一方は単純に手数を増やして総量を増やす方法であり、もう一方はpUC系オリジンから複雑な構造に対して有効と考えられるR6Kオリジンのプラスミドへの変更を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、当初予定していたコンストラクトの構築には成功している。ただし、ヒトIFNb 遺伝子のS/MAR 領域がpUC系の大腸菌内にてリコンビネーションを起こしてしまうようであり、これを回避させるための工夫を現在進めているところである。その工夫の一つとしては、トランスフォームからミニサークル化、ならびにその回収までの時間を出来る限り短く抑えることである。現時点における最も単純な対処法であるが、ある程度の効果は認められている。ただし、大量にミニサークルを調達するにはかなり手間がかかるため、現在複雑な構造に対処し得ると考えられるR6Kオリジンを有するプラスミドへの変更を考慮しているところである。この場合にはミニサークル化に必要な構成もプラスミド内に持たせる必要があり、その構成を持つプラスミドについては合成をすでに進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
現状において、当初予定していたコンストラクトの構築にはすでに成功している。ただし、より効率的にミニサークル化まで行う工夫をすすめる必要があると考えている。一つの対処法についてはシンプルに手数を増やして全体量を増やすことである。また、もう一方はpUC系オリジンからR6K系オリジンへの変更を模索することである。後者についてはかなり手探りであるため、慎重に進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プラスミドとして必要な構成までは構築を進めることが出来たが、rAAVとして作製するために必要な十分な量を確保できなかったため、この確保に必要な額面を次年度に持ち越す必要があった。次年度において、これを実施するために持ち越した額を用いる必要がある。
|