2系統の近交系マウスに由来するミトコンドリアDNA(mtDNA)を有する異質性mtDNAモデルマウスを用いて、世代、組織、発生過程における異質性mtDNA分離様式の解析を実施した。異質性mtDNAの割合は、これまでに構築したPCR-RFLP法に基づいて改良した測定法によって解析を行った。昨年度に引き続き、次世代への異質性mtDNA伝達の様子を解析するために子孫における測定を行った結果、同じ親から同時期に出生した個体間においても、数十%程度の差となる場合があることが観察された。一方で組織間においては、世代間で観察されたような異質性mtDNA割合の差は、少なくとも調べた限りの組織においては観察されず、比較的小さい差として認められた。mtDNAの塩基配列が異なる別のマウス系統では組織間における異質性mtDNA割合の差が比較的大きい場合があることを観察しており、この点において異質性mtDNAモデルマウスの2系統の間で異なる結果となった。初期発生過程における異質性mtDNA分離様式を解析するため、発生工学的手法により初期胚を準備し、割球を単離し、単一細胞からのDNA試料を調製することで、異質性mtDNA割合の測定を実施した。2細胞期から8細胞期の胚では割球間で異質性mtDNA割合に大きな差は検出されず、比較的小さい差として観察された。さらに、卵巣内に存在する卵母細胞においても単一細胞を調製し検討した結果、卵母細胞の間では異質性mtDNA割合に数十%程度の差となる場合があることが観察された。
|