研究課題/領域番号 |
17K07155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 卓 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30771050)
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研究分担者 |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵癌 / VCAM-1 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
我々が樹立した膵臓特異的変異型Kras発現+TGF-betaII型受容体(Tgfbr2)ノックアウト(KO)(遺伝子型Ptf1acre/+;LSL-KrasG12D/+;Tgfbr2 flox/flox)(PKFマウス)は、ヒト膵癌の発癌過程と組織像をよく再現し、急速な癌の進展により生存期間中央値59日で癌死する。 この膵癌マウスに膵癌の標準治療薬gemcitabineを投与し、経時的に血中で上昇する液性因子をスクリーニングした中から、接着因子VCAM-1が得られ、これまでの結果から、VCAM-1は膵癌組織へとマクロファージを遊走させ、gemcitabine抵抗性に関わることが示唆されている。また、ヒトの切除不能膵癌患者においてgemcitabine投与前後で血中VCAM-1が上昇する患者は低下を示す患者に比べ優位に予後不良であることも示され、gemcitabineの治療奏功性のバイオマーカーとなる可能性が期待されている。 本研究では、この短命の膵発癌マウスに対しVCAM-1中和抗体もしくはコントロールIgGを投与し、生存期間延長効果を解析している。これまでにVCAM-1中和抗体投与により、単独投与、およびgemcitabineとの併用投与共に生存延長効果がみられてきている。 またその生存延長効果の機序については組織学的検索を進め、VCAM-1中和抗体投与により、血管新生阻害が生じ、組織中への好中球・マクロファージの浸潤が抑制されており、早期発癌過程のacinar-ductal metaplasiaやpancreatic intraepithelial neoplasia形成が抑制されているという結果がみられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵発癌モデルマウスに対するVCAM-1中和抗体投与により、生存延長効果が得られており、順調に観察期間が経過できている。またその組織学的検索のための検体も採取できており、免疫染色の条件調整も進んでいる。 ヒト膵癌化学療法患者の経時的血漿検体も収集できており、現在の第一選択となっているgemcitabine+nab-paclitaxel療法の患者検体も蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
VCAM-1中和抗体投与による生存延長効果のインパクトを確定させる。単独投与およびgemcitabineとの併用投与による効果の相違についても検討する。実際に薬剤投与された膵癌マウスの検体採取を行い、膵癌微小環境の免疫・炎症細胞浸潤の変化を中心に比較解析を行う。また膵癌組織のみならず、他臓器(肝臓、腎臓、消化管、下腿筋肉下大静脈など)の採取も行い、そこで見られる変化についても検討する。 gemcitabine+nab-paclitaxel療法患者の血漿検体について、VCAM-1濃度を測定し、VCAM-1上昇群と下降群の無増悪生存、全生存期間との相関を解析する。
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