研究実績の概要 |
昨年度末(前回報告後)、ヒト鋸歯状大腸癌の結果は論文化できた。以下の内容である。大腸における鋸歯状病変は組織学的に現在、過形成ポリープ、鋸歯状腺腫/ポリープ、鋸歯状腺腫に大別されている。しかし、これらの病変の発生過程における組織形態と分子生物学的背景は未だ明らかではない。【方法】今回、我々は、過形成ポリープ22例、鋸歯状腺腫/ポリープ41例、鋸歯状腺腫19例において、増殖マーカーKI67, 老化マーカーP16, さらに、間質から分泌され陰窩の形態形成に関与するといわれるWNT5Aの抗体による免疫組織化学染色を行った。また、上皮内リンパ球の発現についても各病変においても検討した。【結果】過形成ポリープと鋸歯状腺腫/ポリープにおけるKI67やP16陽性上皮細胞の分布は、鋸歯状腺腫と大きく異なっていた。KI6とP16共陽性上皮細胞は過形成ポリープと鋸歯状腺腫/ポリープでは少なかったが、興味深いことに、鋸歯状腺腫/ポリープでは、P16陽性上皮細胞や間質のWNT5A陽性細胞は、ちょうど腺管のcleft(くびれ)の部分に目立つ特徴がみられた。また、上皮内リンパ球の発現は、過形成ポリープよりも鋸歯状腺腫/ポリープで豊富であった。【結論】組織形態学的に増殖と老化、間質因子からみると、鋸歯状腺腫/ポリープの特徴である底部のT字、L字型の陰窩の拡張は、増殖細胞と老化(増殖停止)細胞のpatchyな分布や間質からの不規則な入力によって起きていることが示唆された。本研究結果は、鋸歯状病変の形態形成メカニズムの解明、さらには治療標的への応用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当教室の有する遺伝子改変マウスを交配することによって作製するマウスで下記のマウスを作製し、腫瘍形成を検証中である。 1) 発現ロス:p16, p53, Pten, Smad4遺伝子ノックアウト(コンディショナルも)、2) 組織特異性:Lgr5CreERT2, Bmi1-CreER, Villin-CreERなど腸管の分化細胞あるいは幹細胞など1)と交配することで、選択的に遺伝子をノックアウトできる。Braf V600E/Lgr5CreERT/p16 floxマウス(Braf変異とp16ノックアウトを大腸の幹細胞で引き起こす)をはじめ、数種類は既に交配終了し、腫瘍形成の検索中。
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