研究課題/領域番号 |
17K07164
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和久 由佳 (仲島由佳) 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40399499)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | rRNA / 塩基メチル化 |
研究実績の概要 |
腫瘍形成におけるrRNAメチル化の役割を検討するために、マウスに大腸がん由来のMC38細胞を移植し、所属リンパ節、脾臓や末梢血中のCD8+ T細胞における塩基メチル化(m1A)のレベルを抗体を用いたFACS解析により検討した。その結果、腫瘍形成の初期で、分化度の高いCD8+ T細胞のサブポピュレーションにおいてm1A陽性の細胞の割合が増加していた。この傾向は、増殖マーカーであるKi-67の陽性の割合と正の相関を示していた。次に、野生型又はPD-1KOマウス由来のCD8+ T細胞におけるm1A陽性細胞の割合を検討した。がん細胞を移植していなマウスにおいて、m1A塩基メチル化陽性の細胞はPD-1KOにて増加を示したが、担がんマウスにおいては、PD-1KOによる明らかな増加は見られなかった。さらに、担がんマウスに免疫反応を亢進させる処理を行ったところ、Ki-67や活性化マーカーの一つであるIFNg陽性の割合とともに、m1A陽性細胞の割合が増加した。 多くのrRNAの塩基メチル化は1箇所ごとに1つのメチル化因子により制御されていることが知られている。これまでに申請者らは、ヒトがん細胞やマウス繊維芽細胞においてNMLがm1A塩基メチル化因子として働くことを明らかにしている。そこでCD8+ T細胞におけるm1Aメチル化因子の検討を行うために、NMLをノックダウンすることを試みたが、トランスフェクション効率が悪かっために、上手くノックダウンすることが出来なかった。そのため、NMLの発現を抗体を用いたFACS解析により検討した。その結果、m1AとNML陽性の細胞の分布はオーバーラップしていた。 これらの結果から、NMLを介したm1A塩基メチル化はCD8+ T細胞の活性を制御する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、本年度の目標をほぼ達成出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らはこれまでに、NMLの機能はグルコース量により制御されていることを明らかにしている。がん免疫もまた細胞外のグルコースやアミノ酸などの栄養素の量によりその活性化が制御されており、免疫治療耐性と関係する可能性が考えられる。そこで、m1Aメチル化とグルコースやアミノ酸のによるCD8+ T細胞の活性化の制御を検討するために、グルコースやアミノ酸の低減又はフリーの培地を用いていてCD8+ T細胞の活性化を誘導する。これらの培養条件におけるm1Aの割合やCD8+ T細胞のサブポピュレーションの変動、活性化マーカー、NMLの発現の解析から代謝と塩基メチル化、CD8+ T細胞の活性化の関係性を検討する。さらに、アドバック実験を行い、栄養素変動により変化したm1Aメチル化やCD8+ T細胞の活性が回復するかどうかを調べる。また、抗PD-1抗体を用いて同様の培養実験を行い、免疫治療耐性との関係を検討する。 加齢に伴う免疫力の低下もまた、PD-1抗体治療に対する耐性の一つの要因として考えられる。加齢に伴うPD-1抗体治療耐性とm1Aメチル化との関係を検討するために、加齢PD-1KOマウスや加齢担がんPD-1KOマウス由来のリンパ節、脾臓や末梢血中のCD8+ T細胞におけるm1Aレベルの検討を行う。さらに、CD8+ T細胞のサブポピュレーションの割合や活性化マーカー、NMLとの発現の割合を解析しm1Aメチル化と加齢に伴うPD-1阻害療法耐性との関係を検討する。
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