これまでに、CD8陽性T細胞においてm1A塩基メチル化細胞の割合が活性化に伴い増加することを見出している。m1A陽性CD8陽性T細胞の増加が抗原刺激によるものかどうかを卵白アルブミン(OVA)特異的なT細胞受容体を持つOT-1マウスを用いて検討を行った。その結果、OVAを発現させた細胞をOT-1マウスに移植することにより、m1A陽性細胞の数が増加し、その傾向は増殖マーカーであるKi-67陽性細胞の割合と相関していた。これらの結果から、CD8陽性T細胞におけるm1A塩基メチル化は抗原刺激により増加し、T細胞の活性化に関与する可能性が示唆された。 m1A陽性のCD8 T細胞の割合がPD-1ノックアウトにより増加することから、PD-1経路阻害による腫瘍形成の抑制にm1A塩基メチル化が関与している可能性がこれまでに示されている。しかしながら、PD-1抗体治療に対する耐性を示す患者が多く存在することが問題となっており、この原因の1つとして加齢に伴う免疫応答の抑制が挙げられる。そこで、加齢に伴うPD-1 KOの腫瘍退縮効果の抑制とm1Aメチル化の変化の関係を検討した。若いPD-1 KOマウスにおいて見られるm1A陽性細胞の割合の増加が、腫瘍退縮効果が見られなくなった加齢PD-1 KOマウスでは見られなかった。 代謝の変動とT細胞の活性化は結び付いており、中でもミトコンドリア代謝と抗腫瘍活性との関係が注目されている。T細胞の加齢とm1A修飾とミトコンドリア代謝との関係を検討するために、酸素消費速度(OCR)の測定を行った。その結果、m1A陽性細胞の多い若い担癌PD-1KOマウス由来のCD8陽性T細胞においては、担癌野生型マウス由来の細胞よりもOCRの値は高い傾向を示した。さらに、OCRの値は加齢マウス由来のCD8陽性T細胞においては低い値を示すことが明らかになった。
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