研究課題
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであり、その発がん機序にウイルス因子であるTaxとHTLV-1 bZIP factor (HBZ)が重要な役割を果たしている。ATL細胞株MT-1では、ごく一部の細胞が一過性にTaxを発現し、HBZは持続的発現パターンを呈する。今年度はTax及びHBZの病原性における意義を解析するため、Tax発現細胞とHBZ発現細胞における遺伝子発現プロファイルと表現型(細胞死、細胞周期)の解析を行った。具体的には、Tax反応性にEGFPを発現するMT-1及びKK-1(MT1GFP、KK1GFP)からTax発現細胞(EGFP陽性細胞)及びHBZ発現細胞(EGFP陰性細胞)をセルソーターにて分取し、それぞれの細胞を用いて、核酸抽出、AnnexinV/7-AAD染色による細胞死解析、DAPI染色による細胞周期解析を行った。これらの解析の結果、Tax発現細胞はHBZ発現細胞と比較してアポトーシス抵抗性を有し、細胞周期に関してはG2期からM期への進展が抑制されているという結果を得た。本所見を国際誌Proc Natl Acad Sci USAに報告した(Mahgoub M, Yasunaga JI, Iwami S, Nakaoka S, Koizumi Y, Shimura K, and Matsuoka M. Sporadic on/off switching of HTLV-1 Tax expression is crucial to maintain the whole population of virus-induced leukemic cells. Proc Natl Acad Sci USA, 2018. doi: 10.1073/pnas.1715724115)。
2: おおむね順調に進展している
当初のH29年度の目的であった、Tax発現細胞、HBZ発現細胞間の遺伝子発現の違いと、細胞の形質の差(細胞死、細胞増殖)に関するデータが得られ、原著論文にて発表することができた。一方、Tax発現を誘導する機序に関してshRNAライブラリーを用いて関連分子のスクリーニングを行う予定であったが、遺伝子抑制の効率を上げるため、CRISPR/CAS9システムによる遺伝子ノックアウトを応用したスクリーニング系に変更した。こちらも予定通り解析を進めている。
Tax発現を誘導する機序に関して、MT1GFP、KK1GFPを用いて、CRISPR/CAS9システムによる関連遺伝子のスクリーニングを進める。またTax誘導とワクチンによる新規治療法の開発のため、Taxを一過性に発現する細胞株を樹立し、化合物スクリーニングへの応用を目指す。
Tax発現誘導機序を解析するためにshRNAライブラリーを用いる予定であったが、遺伝子抑制の効率を上げるためにCRISPR/CAS9システムによるスクリーニング系を導入することになり、実験計画に若干の変更が生じた。スクリーニングは当初の予定通り翌年度に行う予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
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