研究課題
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであり、その発がん機序にウイルス因子であるTaxとHTLV-1 bZIP factor (HBZ)が重要な役割を果たしている。TaxはATL細胞のごく一部(0.5-3%)で一過性に発現し、細胞全体の生存に必須の役割を果たすのに対し、HBZは殆どの細胞で持続的に発現し細胞の増殖を促進する。本課題では、Taxの一過性発現とHBZの持続発現の発がんにおける役割に関し、解析を進めている。平成30年度は、同一ATL細胞株内での、Tax発現細胞とHBZ発現細胞におけるクロマチン構造の差異に関してATAC-seqにて解析を行った。Taxの一過性発現に伴いNF-kBおよびAP-1転写因子群の結合モチーフがオープンになることが示唆され、遺伝子発現プロファイルの変動を惹起することが示唆された。また、Taxの一過性発現を制御する分子機構を解析するために、各種阻害剤を用いたスクリーニングを開始した。
2: おおむね順調に進展している
TaxおよびHBZの発現に伴う宿主遺伝子発現の変化、クロマチン構造の変化に関する解析を進めており、当初の目的であったHTLV-1の病原性発現機構におけるTaxとHBZの意義に関して新しい知見が得られている。また、Tax発現制御に関わる分子のスクリーニングも同時に進めており、概ね順調に進展している。
Tax発現細胞及びHBZ発現細胞の各々にて重要な機能を担っていると考えられる宿主遺伝子を見出し、その機能に関して、ノックダウンもしくは強制発現にて形質の変化を解析する。Tax発現制御に関与する宿主因子のスクリーニングを継続し、同定後にその作用機序を解析する。
2019年度にTax発現制御に関与する宿主因子のスクリーニングを推進するための化合物入手の購入を予定している。また成果発表のため国際学会への出席を予定しており、これらへの支出が見込まれたため。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
Retrovirology
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Journal of Virology
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