血管内皮特異性にCreリコンビナーゼを発現するCdh5-Creマウスと、PKN2 flox/floxマウス(PKN2遺伝子が、Creリコンビナーゼ存在下でノックアウトされるように構築したマウス)とを交配し、血管内皮細胞特異的PKN2ノックアウトしたマウスを得た。このマウスは、生殖・発育ともに明かな異常を示さなかったことから、個体発生においては、血管内皮PKN2は必須ではないことが明かになった。このマウスと、PKN3ノックアウトマウス、そしてコントロールとして、PKN2 flox/floxマウス、および野生型マウスそれぞれの尾静脈から、B16メラノーマおよびルシフェラーゼを産生するルイス肺がん細胞を注入し、肺への転移(B16メラノーマについては、転移数・腫瘍サイズ、ルイス肺がん細胞については、ルシフェラーゼ発現量)測定を行った。確定的な結果を得るためには、さらに例数を重ねる必要があり、実験継続中である。 PKN3ノックアウトマウス(PKN3を欠損したマウス)においては、がんの血行性転移が抑制されているが、そのメカニズムとしてPKN3の血管内皮における役割に注目が集まっている。PKN3ノックアウトマウスを用いて、大動脈リングアッセイ(大動脈片を切り出し、増殖因子を含んだ寒天中にいれて培養し、血管新生を観察する)や角膜ポケットアッセイ(角膜に切り込みを作製し、増殖因子を添加して血管新生を観察する)を行うと、野生型マウスの場合と比較して、血管新生が抑制されることをすでに確認していたが、上述の血管内皮細胞特異的PKN2ノックアウトマウスについても、これらのアッセイを行い、血管内皮PKN2の血管新生における役割を検討した。これについても、結果の確定にはさらに例数を重ねる必要があり、現在も実験継続中である。
|