研究課題
ヒトNASH生検、肝細胞癌組織、大腸癌転移患者の正常肝臓組織、またはNASHモデルマウス(Tsumura Suzuki Obese Diabetes:TSOD、STZ-administered Mice:STAM)の肝臓腫瘍と肝組織を用いて、QSTAR-Elite LC-MS/MS、Ingenuity Pathway解析及び免疫染色を行った。その結果によりNASH由来肝細胞癌やNASH生検におけるインスリンシグナリング、SMAD3-TGF-beta、beta-catenin、Nrf2、SREBP-LXRalpha及びnuclear receptor-interacting protein 1 (NRIP1)転写因子の活性化が認めたれた。さらに、PPARsや p53の抑制、cytokeratin 8/18(CK8/18)の発現減少、ミトホンドリア機能不全、脂質代謝不全、alcohol代謝不全、線維化及び酸化的ストレスの誘導が認められた。また、ヒトのNASH肝細胞癌と異なって、STAMマウスの肝癌組織におけるPPARsの抑制が認めらなかったがCK8/18の有意な過剰発現が観察された。メタボリックシンドロームモデルTSODマウスでは、ヒトNASH様の組織変化を背景として多数の細胞巣と肝腫瘍の発生が認められた。細胞増殖及びアポトーシスはTSODマウスの細胞巣と肝臓腫瘍ではTSNOマウスと比較して有意に高かった。また、TSODマウスの変異細胞巣において8-OHdG陽性率は有意に上昇した。TSODマウスの肝臓では脂肪沈着や線維化、炎症細胞浸潤といったNASH様の変化が肝組織に認められた。また、肝腫瘍に対するP-mTOR、P-S6、P-PI3K、P-Erk1/2、P-Aktの有意な高発現と核内のP-FoxO3aの発現減少が見られ、それはmTORシグナリングの活性化によるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
1.ヒトNASH生検肝組織、肝細胞癌部及び非癌部、また、ヒト大腸癌の肝転移患者の正常肝臓組織を用いて、QSTAR LC-Ms/Ms、Ingenuity Pathway解析、シグナリング伝達解析及び目的蛋白質の免疫組織学的解析を行った。NASH生検肝組織ではcytokeratin 8 and 18 (CK8/18)の有意な上昇と癌部における有意な抑制が認められた。NASH生検や肝臓癌におけるインスリンシグナリング、SMAD3-TGF-beta、beta-catenin、Nrf2、SREBP-LXRalpha及びNRIP1転写因子の活性化が観察された。さらに、PPARsや p53の抑制、CK8/18の発現減少、ミトホンドリア機能不全、脂質代謝不全、alcohol代謝不全、線維化及び酸化的ストレスの誘導が認められた。また、ギャップ結合のシグナリングとクラスリン媒介エンドサイトーシスの活性化が見られた。2. NASHモデルTSOD及びTSNOマウスの肝臓における病理組織学的、免疫組織学的、プロテオーム解析を行った。TSODマウスの肝臓では脂肪沈着や線維化、炎症細胞浸潤といったNASH様の変化が肝組織に認められ、肝腫瘍が発生した。肝腫瘍に対するmTORシグナリングの活性化が見られた。また、TSNDマウスの肝臓腫瘍においてインスリンシグナリングの活性化、RICTOR, ADORA2A、SIM1の活性化が認められた。3. NASHモデルSTAMマウスの肝臓組織、腫瘍とC57Bl/6Jマウスの肝臓においてプロテオーム解析を行った。STAMマウスの肝臓腫瘍ではbeta-cateninやPPAR-alphaの活性化及びCK8/18やprohibitin 1/2の誘導が認められた。
1.29年度の引き続き、NASHモデルTSOD及びTSNOマウスに肝臓組織や腫瘍におけるプロテオーム解析の結果の確認や分子ターゲットの発見のためTSODマウス及びTSNOマウスの肝臓組織や腫瘍を用いて、mRNA発現解析、目的蛋白質の免疫組織学的解析する。2.29年度の引き続き、プロテオーム解析の結果の確認や分子ターゲットの発見のため、18週齢の雄NASHモデルSTAMマウス(C57BL/6-NASH) やC57Bl/6コントロールマウス(Charles River laboratories Inc.)を用いて、肝臓腫瘍と肝組織における生化学的解析及び目的蛋白質の免疫組織学的解析を行う。3. TSODやTSNOマウスの肝臓腫瘍と肝組織を用いてメタボローム解析を行う。そのためにCE-TOFMS及びCE-QqQMS、MassHunter 定量解析、Ingenuity Pathway解析、upstream regulator解析及びシグナリング伝達解析を行い、マウス肝臓の代謝物質を解析し、変動を提える。メタボローム解析の結果を確認するために、目的酵素や蛋白質のmRNA発現解析、生化学的や免疫組織学的解析を行う。
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Int J Mol Sci
巻: 18 ページ: -
10.3390/ijms18020434