さまざまながんで広くマイクロRNA(miRNA)の発現減少が認められることが知られているが、その原因は明らかではない。本研究では、miRNAの生合成に関わる複数の分子にポリ(ADP‐リボシル)化酵素であるタンキラーゼに結合すると考えられるモチーフ配列があることに着目した。ポリ(ADP‐リボシル)化とは、標的タンパク質にポリ(ADP‐リボース)鎖を付加する翻訳後修飾である。タンキラーゼによりポリ(ADP‐リボシル)化されたタンパク質は、物性が大きく変化するとともに、ポリ(ADP‐リボース)鎖がシグナルとなり、ユビキチン化による分解へと導かれることが知られている。miRNAの生合成は、(1)pri-miRNAの転写、(2)pre-miRNAの産生、(3)pre-miRNAの核外輸送、(4)Dicerによるpre-miRNAの切断、(5)RNA誘導型サイレンシング複合体の形成、の五段階から成る。本研究ではその第2年度である2018年度までに、タンキラーゼが調節していると考えられるステップがpre-miRNAの産生であることを明らかにした。そこで、本研究の最終年度である2019年度においては、このステップに関与している分子DGCR8とDROSHAに着目し、タンキラーゼとDGCR8およびDROSHAが結合することを明らかにした。また、2018年度に構築したpri-miRNAのプロセッシングをモニターする実験系を用い、タンキラーゼがpri-miRNAのプロセッシングを促進することを明らかにした。2019年度は最終年度であり、これまでの結果を取りまとめ、論文として国際誌に投稿・出版した。
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