研究課題/領域番号 |
17K07187
|
研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
島 礼 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 部長 (10196462)
|
研究分担者 |
佐藤 郁郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), ティッシュバンクセンター, 部長 (50225918)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | セリン・スレオニンプロテインホスファターゼ6型 / イニシエーション / プロモーション |
研究実績の概要 |
これまで、セリン・スレオニンプロテインホスファターゼが生体内で発がんに関してどのような機能を持つかについてマウスを用いた実験はなされていなかった。我々は、これまでの生化学的な解析を元に、セリン・スレオニンプロテインホスファターゼ6型(PP6)が、発がん・悪性化へ抑制的に働くのではないかとの仮説を持った。現在、PP6による発がん・悪性化の制御を明らかにし、そのメカニズム解明によりがん診断・治療に応用することを念頭に研究を行っている。 PP6が、生体内でがん抑制的に働くか否かを、マウス皮膚の発がん実験で証明を試みた。TPA/DMBAを用いたマウス皮膚2段階発がん実験を行った。この発がん実験では、発がん物質(DMBA)によるイニシエーションと、腫瘍プロモーター(TPA)による腫瘍のプロモーションが必須とされていたが、驚いたことに、PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)を欠損させたマウス皮膚では、DMBAのみで、腫瘍発生が認められること。また、その発生は野生型の皮膚においてDMBA/TPAによって発生するそれより著しく早期に発生することを見出した。したがって、マウスの皮膚において、PP6欠損組織では、強い腫瘍促進状態にある事が示唆された。これらのデータを基に、2つの課題をもった(課題1)Ppp6cがメラノーマのがん抑制遺伝子か否かを明らかにすること(課題2)Ppp6c機能不全は、活性化RASによる腫瘍化を促進するか否かを明らかにすること。本事業において、我々はこの2つの課題の検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1については、がん組織において変異の頻度が高いRasとの関係を調べるため、マウスの皮膚で、2重変異(変異型K-ras発現とPpp6c遺伝子欠損)を誘導させた。その結果、Ppp6c遺伝子欠損がK-ras変異による腫瘍化をさらに強くドライブすることが明らかとなった。 具体的には、課題2については、メラノサイトにおいて、タモキシフェン投与により、変異型のBrafを発現し、Ppp6cの欠損を起こすマウスの作成に成功した。具体的には、BRafV600Eを発現しPten欠損を起こすマウス(Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ptenloxp/+)と、我々が作製したPpp6cflox/floxマウスとをかけあわせて、Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ppp6cflox/+を作製した。このマウス同士をかけあわせて、Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ppp6cflox/floxマウスの作製に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
課題1の解明のために、ケラチノサイトまたはMEF細胞において変異型K-rasが発現する不死化細胞の作成に成功した。本細胞株を用いて、Ppp6cをノックダウンさせてヌードマウスに移植し腫瘍の増大速度への影響を調べる。 課題2の解明のために、Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ppp6cflox/+と、Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ppp6c+/+を別々に20匹用意して、それぞれの耳、尾、脇腹に4-OH tamoxifenを塗布して、メラノーマの発生の有無と転移の有無を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費が当初の想定よりも少なく済んだため。 最終年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
|