研究実績の概要 |
現在、大腸がんは、日本で最も罹患数の多いがんであるが、進行大腸がんは既存の治療法に抵抗性を示すことが多く、大腸がんの新機軸の予防・治療法の開発は急務である。疫学研究により、甲状腺ホルモン異常と大腸がんとの間に因果関係がある可能性が浮上している。イスラエルの疫学研究によれば、甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法は、大腸がん発生リスクを軽減することが示唆されている(Rennert G. et al., 2010, JNCI)。米国と英国のそれぞれの大規模な疫学研究でも、甲状腺ホルモン補充療法により大腸がん発生が減少することは確認されている(Friedman GD. et al., 2011, JNCI: Boursi B. et al., 2015, JNCI)。英国の研究では、甲状腺機能亢進症および未治療の甲状腺機能低下症が、それぞれ大腸がん発生リスクを増加させることも示されている(Boursi B. et al., 2015, JNCI)。 消化器系は、発生、成長段階において甲状腺ホルモンの強い制御を受けていることが知られている。しかしながら、大腸がんの進展における甲状腺ホルモンの役割については、様々な研究が行われているものの、現在に至るまで体系的な知見は得られていない。現在、申請者らは、大腸がんモデルマウスのApcΔ716変異マウスを用いて、甲状腺ホルモンを活性化する2型脱ヨウ素酵素(DIO2)が腸管腫瘍の間質で高発現し、そして腫瘍形成を促進している可能性を見出した。
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