研究課題/領域番号 |
17K07193
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
安田 純 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (00281684)
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研究分担者 |
齋藤 さかえ 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (20335491)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん素因遺伝子 / VUS / 有害変異 / 家族性乳がん卵巣がん症候群 |
研究実績の概要 |
がんは環境要因と、がん抑制遺伝子に代表される遺伝的要因との相互作用によって発症する。がん抑制遺伝子には機能未知多様体(Variants of uncertain significance: VUS)が多数存在し、臨床診断上の困難を生じている。東北メディカル・メガバンク計画で収集した検体のゲノム情報を活用して、これらのVUSの一般集団での頻度や腫瘍の家族集積性を明らかにするため、日本人全ゲノム参照パネル(3.5KJPN)に収載されている152か所のがん素因遺伝子上の変異について情報解析を実施した。まず、3.5KJPN上のHBOC及びLynch症候群関連遺伝子の中の既知の疾患原因変異9箇所について、AnnovarないしはdbNSFPを活用して属性情報を付与し、変異のインパクトを推定するCADD, Eigen, DANNの3つのパラメーターを評価、有害変異候補の閾値を決定した。152か所のがん素因遺伝子についても同様の解析を実施し、これらには約20万か所の多型が存在し、そのうち、978箇所が上記基準に当てはまる有害変異候補として同定された。そのうち、一塩基置換に基づくものが661箇所(うち停止発生が42箇所)、挿入欠失配列が217箇所であった。これらの分布は過去の研究とよく類似しており、がんの素因となる変異は集団内で一定の頻度で蓄積していることが判明した。これら3.5KJPN検体のうち、コホート調査での調査票情報が利用可能であった約2500例についてHBOC関連のがん発症の既往歴家族歴について調査した。コホート参加者の姉妹について、HBOC発症の確率が有意に高いことが示され、変異のインパクトを推定するCADD, Eigen, DANNの3つのパラメーターは若年発症の腫瘍に関する有害変異の予測において有用である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3.5KJPN中に発見されているHBOC及びLynch症候群関連遺伝子の中の既知の疾患原因変異9箇所について、AnnovarないしはdbNSFPを活用して属性情報を付与し、変異のインパクトを推定するCADD, Eigen, DANNの3つのパラメーターを評価、有害変異候補の閾値を決定した。その結果に基づき、Huangらの報告によるがん素因遺伝子(生殖細胞系列の変異によってがん発症の確率が増加する可能性のある遺伝子)152箇所について多型の評価を実施した。また、挿入欠失配列についてはタンパク質構造に変化を及ぼす可能性のあるスプライシングに影響を及ぼすもの及びフレームシフト変異を有害変異候補と規定した。3.5KJPN中には152か所のがん素因遺伝子上には約20万か所の多型が存在し、そのうち、978箇所が上記基準に当てはまる有害変異候補を同定した。そのうち、一塩基置換に基づくものが661箇所(うち停止発生が42箇所)、挿入欠失配列が217箇所であった。これらの分布は過去の研究とよく類似しており、がんの素因となる変異は集団内で一定の頻度で蓄積していることが判明した。これら3.5KJPN検体のうち、コホート調査での調査票情報が利用可能であった約2500例についてHBOC関連のがん発症の既往歴家族歴について調査した。コホート参加者の姉妹について、HBOC発症の確率が有意に高いことが示され、変異のインパクトを推定するCADD, Eigen, DANNの3つのパラメーターは若年発症の腫瘍に関する有害変異の予測において有用である可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は同様の解析をLynch症候群の原因遺伝子群へと進め、コホート調査情報と照らし合わせ、日本人集団中に存在する成年発症の家族性腫瘍症候群の頻度の推定を行う。さらに、全ゲノム解読検体での検討対象を広げる。ToMMoにおいて取得済のゲノムデータとして分譲対象となっているSNPアレイデータのあるコホート参加者について、ジェノタイプインピュテーションを実施し、がんと関連のありそうな多様体のキャリア候補を同定する。その後既往歴・家族歴との相関を統計学的に分析する。 更に、これら癌関連遺伝子変異のキャリア由来の不死化リンパ球のDNA修復能やアポトーシス感受性などについて各種の細胞生物学的解析を実施する。こうしたin vitroのエビデンスを重ねることで、集団遺伝学的解析などで推定された発がん感受性と癌関連遺伝子群の関連性についての検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として情報解析に時間が必要であり、細胞生物学的解析に研究資源を十分振り向けることが困難であったため。
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