研究実績の概要 |
家族性腫瘍関連遺伝子のVUSについて東北大学の日本人全ゲノム参照パネルデータを元にこれらアノテーション技術を利用して影響の大きいと予想される多様体をもつ個人が悪性腫瘍の既往歴・家族歴を持つかどうかを調査票情報に基づいて検討し、がん関連遺伝子の多様体の中である程度発がんに関与しうる中等度に病的な変異を探索することを目標として日本人標準ゲノムパネルである3.5KJPNv2に収載されている遺伝性腫瘍症候群原因遺伝子の多型について生命情報科学的な検討を実施した。ClinVarなどを正解セットとし、3つの変異インパクトを推定する統計量(CADD, DANN, Eigen)について報告されている病的遺伝子変異との相関と確認した。さらに3.5KJPNに収載された既知の病的変異のうち、マイナーアレル頻度(MAF)が最大のものが0.0005であったことからこれと同等か下回る多様体について検討することとした。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子BRCA1/2について、検討し、CADD > 25, Eigen > 0.5, MAF <0.0005を示すVUSが中等度に病的な変異である可能性を見出した。これらの遺伝的多様体について既報の類似データと比較し、確かに乳がん患者にこれらの変異が蓄積している傾向を確認した。また、gmomADデータベースと比較し、有害変異候補が民族単位で異なることも見出した。そこで、実際に東北メディカル・メガバンク計画で収集された3.5万人の既往歴、家族歴情報と比較し、これら中等度の病的変異を持つコホート参加者の姉妹のがん罹患率が統計的に有意に高いことを示し、Tokunaga et al., PLoS One 2021として報告した。
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