研究課題/領域番号 |
17K07196
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 正久 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20597455)
|
研究分担者 |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | LncRNA |
研究実績の概要 |
癌幹細胞は、自己複製能・造腫瘍能・多分化能を有し、抗癌剤や放射線治療に抵抗性を示し再発・転移を繰り返す原因となる。癌幹細胞は癌細胞集団の中で極めて少数であるためその細胞特性や治療効果の評価が困難である。 私たちは癌幹細胞が低プロテアソーム活性を示すという性質を利用し、ODC (Ornithine decarboxylase) -degron 遺伝子導入によって癌幹細胞を可視化、濃縮できる独自の手法を確立した。ODC-degronを大腸癌細胞株であるHCT116に遺伝子導入することによって癌幹細胞集団と非癌幹細胞集団を分離できることが確認できたため、平成29年度はRNA-sequencing法によってHCT116の癌幹細胞集団と非癌幹細胞集団で発現しているLncRNA (Long non-coding RNA) の網羅的な解析を行い、比較検討することで癌幹細胞と強い関連を示すLncRNAの同定を試みた。その結果、34種類のLncRNAの発現が癌幹細胞集団で有意に2倍以上上昇していることがわかった。次に同定したLncRNAの臨床的意義を明らかにするため、LncRNAを含む様々な遺伝子発現量とそれに対応した予後情報などの臨床病理学的データが登録されているThe Cancer Genome Atlas (TCGA) データセットを用いて解析を行った。その結果、RNA-sequencing法により同定した34種類のLncRNAのうち18種類のLncRNAでTCGAデータセットを用いた大腸癌症例における予後解析を行うことが出来た。予後解析の結果、大腸癌の予後不良因子として2種類のLncRNAを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は計画していた (1) 癌幹細胞濃縮法による癌幹細胞の分離と LncRNAの網羅的遺伝子発現解析と、(2) 当該lncRNAの細胞学的機能解析 (癌幹細胞性の証明) のうち、(1) を計画通りに行うことが出来た。(2) に関してはこれから解析を進めていくが、平成30年度以降に計画していたTCGAデータセットを用いた予後解析を行うことが出来たため、計画はおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究により、大腸癌の予後に関連し、癌幹細胞で発現量の高いLncRNAを2種類同定することが出来た。今後はこれらのLncRNAをsiRNA, shRNAやCRISPR技術を用いてノックアウトまたはノックダウンし、種々の細胞学的機能解析を行う。特に癌幹細胞性の特徴である非対称性分裂(蛍光染色)、抗癌剤耐性(5-FU、L-OHP などを用いた MTT assay)、sphere 形成能、各種癌幹細胞マーカー発現の解析といった in vitro の解析を行う。in vivoではマウス皮下移植での腫瘍形成能、尾静脈投与での肺転移能の解析を行い、さらに xenograft モデルでの抗癌剤投与による抗癌剤耐性も評価する。 以上に加え、細胞内における局在解析や結合タンパク質の同定を行うことで、当該LncRNAそのものの機能についても明らかにしていく。さらに、阪大消化器外科の持つ臨床サンプルを用いた臨床病理学的因子および予後との関連についても検討を進めていく予定である。
|