研究課題
癌幹細胞は、自己複製能・造腫瘍能・多分化能を有し、抗癌剤や放射線治療に抵抗性を示し再発・転移を繰り返す原因となる。私達はlong non-coding RNA (LncRNA) に着目し、癌幹細胞に対する新規核酸治療法の開発研究に取り組んだ。初年度、2年目の研究で大腸癌の癌幹細胞集団と非癌幹細胞集団で発現しているLncRNAの網羅的な解析、The Cancer Genome Atlas (TCGA) データセットを用いた予後解析を行った結果、癌幹細胞集団で発現が高く、大腸癌の予後不良と関連する因子としてLINC01534をピックアップした。また、LINC01534に対するsiRNAは、大腸癌細胞株の増殖を抑制し、Cdc2、 Cyclin B1、CDC25B、CDC25Cなどのタンパク発現の低下を介してG2/M期での細胞周期停止を誘導することを明らかにした。最終年度は、大腸癌細胞株においてLINC01534をノックダウンした後にRNA-seqを実施した結果に対し、Ontology解析やIPAによる分析を行い、LINC01534に特異的な分子制御について詳細な解析を進めた。そして、LINC01534が小胞体ストレス応答と強く関連していることが分かったため、小胞体ストレス応答関連分子、さらにその下流にあり細胞死の1つの要因であるオートファジー関連分子の解析を行った。その結果、栄養飢餓状態にある大腸癌細胞HCT116において、LINC01534のノックダウンによって小胞体ストレス応答関連遺伝子やオートファジー関連遺伝子のタンパクレベルでの発現量の増加がみられた。以上より、LINC01534は小胞体ストレス応答とオートファジーの進行を細胞調和的に抑制する役割も明らかとなった。本研究の結果は癌におけるLncRNAが果たす役割の解明に繋がり学術的な意義がある。
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