研究実績の概要 |
悪性グリオーマは脳腫瘍の中でも最も化学療法が困難な, 致死率の高い難治性疾患の一つである. 本研究は, 独自に開発した融合グライコプロオミクス法を用いて, 悪性グリオーマから単離・樹立した脳腫瘍がん幹細胞 (Glioma initiating cells: GIC) の分化に伴って大きく変動する機能糖タンパク質を網羅的に探索・同定し, これらの糖鎖構造とタンパク質機能を詳細に解析することにより, GICの維持・分化制御機構を解明することを目的としている. 最終的には, 有効な治療ターゲットとなる分子を絞り込み, 詳細な機能解析を行うことにより, 脳腫瘍の新規治療法開発や創薬への基礎的情報として, 臨床応用へ繋げることを目標としている. 本研究課題1年目では, 新規融合グライコプロテオミクスを用いたヒトグリオーマ幹細胞の維持・分化制御因子群の探索・同定を目的に, 分化誘導前後のグリオーマ幹細胞を用いてqPCRアレイ法による糖鎖責任遺伝子群の同定を行った. また, qPCRアレイ法と同様の細胞条件を用いて, レクチンマイクロアレイ法を行い, グリオーマ幹細胞の維持・分化制御因子群に関与する特異的レクチンを選択し, このレクチンによるアフィニティーカラムを用いて, このレクチンに結合する糖鎖タンパク質群の最適な抽出条件を検討し, グリオーマ幹細胞の維持・分化制御に関与する糖鎖タンパク質群の抽出を行うことを目標とし, 研究を遂行した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリオーマ幹細胞の維持・分化制御因子群に特異的なレクチンの選択及びこのレクチンを用いた糖タンパク質の抽出については現在遂行中であり, 完了してはいないものの, これまでのレクチンアレイ法及びqPCR法解析結果から, グリオーマ幹細胞の維持・分化制御に関与すると思われる有意な数種類の糖タンパク質群の同定を先行して行った. したがって, 本研究課題は概ね順調に進行していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題2年目では, 初年度の実験計画を引続き遂行し, グリオーマがん幹細胞の維持・分化に関与する糖鎖因子群に有効な特異的レクチンを選択し, このレクチンから抽出された機能糖タンパク質の同定及び, 同定タンパク質の糖鎖構造解析を行うことを目標としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画としては, これまでに単離・樹立したグリオーマ幹細胞に合わせて, 新たに樹立したグリオーマがん幹細胞株を用いたグライコプロテオミクスを想定していたが, 本年度では遂行に至らなかったため, その経費分が次年度使用額が生じた. 次年度ではこの経費を用いて, 当初の計画通り研究を遂行する予定である.
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