研究課題/領域番号 |
17K07202
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
猶木 克彦 北里大学, 医学部, 教授 (40265806)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオマーカー / リキッドバイオプシー / 生検 / プレシジョンメディスン / 肺癌 / EGFR / T790M / 分子標的 |
研究実績の概要 |
本年は、主にEGFR変異検出における組織検体と血液検体を用いた検査方法の比較を行った。 EGFR変異検出法には、本邦で広く行われている高感度PCR法(PNA-LNA PCR Clamp法など)と、欧米で主に行われているreal-time PCR法を用いたCobas法がある。EGFR阻害剤耐性変異(T790M)特異的な新薬Osimertinibを使用する臨床試験で、組織から耐性変異を検出する「コンパニオン診断薬」としてCobas法が使用され、米国および本邦で承認された。しかし、高感度PCR法と比較し感度が低い(J Thorac Oncol 2016)。さらに、これまでは組織からの耐性変異検出が基本であったが、Cobas法による血液を用いた耐性変異検出が2016年秋に米国で承認された。しかし、本研究申請時点では、血液を用いたCobas法は本邦では未承認で、本邦で広く行われている高感度法との比較は十分されていなかった(ただし、2017年7月より本邦でも保険承認となった)。 申請者は、組織検体・血液検体を用いた前向き研究を計画し実施した。EGFR阻害剤耐性肺癌患者の組織検体・血液検体を採取し、PNA-LNA PCR Clamp法とCobas法で検出感度・一致率を比較検討した。組織での結果は検査方法に関わらず一致していたが、血液検体との一致に関しては感受性変異と耐性変異では異なる結果であった。血漿と血清での検出感度の比較では、同様に有意義な結果であった。これらの結果を英文論文にまとめて投稿し、印刷待ちの状態である(Kobayashi K, Naoki K, et al. Onco Targets Ther 2018, in press. )
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年間の検討を元に英文論文を作成、投稿し、受理された状況である。 (Kobayashi K, Naoki K,et al. Comparison of detection methods of EGFR T790M mutation using plasma, serum, and tumor tissue in EGFR-TKI-resistant non-small cell lung cancer. Onco Targets Ther 2018, in press. )
北里大学への異動に伴い、新勤務地での研究の今後の方向性を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
北里大学での研究の今後の方向性を検討中である。北里大学呼吸器内科においては、豊富な臨床例と、そのホルマリン標本の臨床検体の組織バンクがある。また、複数の肺癌細胞株を用いて分子標的薬耐性細胞株を樹立しており、その耐性機序を解明している。 これらの資源を有効に活用し、トランスレーショナルリサーチを推進していく。 また、ALK阻害剤耐性患者の治療も積極的に行っており、そのような患者さんからの臨床検体を用いたプレシジョンメディスンをも合わせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で北里大学へ移動となり研究開始の整備を行っていたため、年度後半は研究費をあまり使用せず次年度へ繰り越す方針とした。本年度では、繰り越し分を含め、臨床検体の遺伝子解析、培養細胞研究、次世代シークエンス解析、免疫染色などに研究費を使用する。 1)EGFR阻害剤耐性肺癌:現在、耐性後に臨床で使用しているタグリッソが、初回治療から投与可能となる予定である。タグリッソ初回治療後の日本人の耐性機序の検討(組織、血液)は十分されておらず、患者さんの組織・血液を利用して耐性機序を解明する。2)EGFR阻害剤(タグリッソ)耐性細胞株を樹立している。その細胞株を使用し、今後、増加するタグリッソ初回治療例の耐性克服に関わる因子を検討する。レセプターチロシンキナーゼ・アレイを用いたタンパク活性化の検討、分子標的薬併用による耐性克服の検討を行う。3)ALK阻害剤耐性肺癌:臨床検体を用いた次世代シークエンスを含む網羅的解析により、最適な治療法を検討する。4)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)耐性肺癌:抗PD-1抗体に加えて、2018年から抗PD-L1抗体が保険承認された。作用機序は類似しているが標的が異なるため、それらの耐性機序や、抗PD-1抗体後の抗PD-L1抗体の有効性や効果予測因子などは十分検討されていない。これらを検討するため、ICI使用前後の検体を用いた免疫染色や次世代シークエンスを行う。
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