本研究の目的は、腫瘍細胞における抑制性免疫チェックポイント分子の発現上昇をきたすゲノム構造異常の同定とその検出法を確立する、ことである。近年、構造異常に伴うprogramed cell death-ligand 1 (PD-L1) 遺伝子の 3´非翻訳領域の欠損や変異がPD-L1の高発現のメカニズムの一つとして明らかにされ、その異常は抗PD-1/PD-L1抗体薬の有用な効果予測マーカーとして期待されている。PD-L1が様々な腫瘍で発現していることが報告されており、それらの発現上昇をきたすゲノム構造異常を同定し、その異常の検出法を確立する。 平成29年度は、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから作製した大腸癌と婦人科癌のtissue micro arrayを使用し、異なる抗PD-L1抗体による免疫染色とPD-L1遺伝子領域に特異的なfluorescence in situ hybridization(FISH)プローブを用いてスクリーニングを行い、PD-L1高発現をきたすゲノム構造異常陽性候補症例を検索した。抗PD-L1抗体による免疫染色では、マクロファージと同等以上の染色強度を示したものを高発現とし、検索を行った。免疫染色でのスクリーニングでは、数十例の高発現例を認めた。高発現を示す症例には、異なる抗PD-L1抗体での発現乖離などの異常な発現を示す症例も認められた。FISHでのスクリーニングでは、十数例の高発現症例に明らかな構造異常を示す所見が認められた。
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