本研究の目的は、腫瘍細胞における抑制性免疫チェックポイント分子の発現上昇をきたすゲノム構造異常の同定とその検出法を確立する、ことである。近年、構造異常に伴うprogramed cell death-ligand 1 (PD-L1) 遺伝子の 3´非翻訳領域の欠損や変異がPD-L1の高発現のメカニズムの一つとして明らかにされ、その異常は抗PD-1/PD-L1抗体薬の有用な効果予測マーカーとして期待されている。PD-L1が様々な腫瘍で発現していることが報告されており、それらの発現上昇をきたすゲノム構造異常を同定し、その異常の検出法を確立する。 2019年度は、PD-L1遺伝子の 3´非翻訳領域変異陽性例の形態像や免疫染色、fluorescence in situ hybridization (FISH)などの分子病理組織学的所見、EBV感染などを検討した。 PD-L2のタンパク発現およびPD-L2遺伝子の構造異常についても、大腸癌、婦人科癌、リンパ腫検体に対し、免疫染色、FISHによるスクリーニングをtissue micro arrayを用いて行った。免疫染色のスクリーニングでは、リンパ腫例にPD-L2の高発現が認められた。FISHでは、PD-L2高発現が認められた全てのリンパ腫検体に異常所見が認められた。 現在、nCounter Analysis Systemでの発現解析を用い、ホルマリン固定パラフィン包埋材料からPD-L1の 3´非翻訳領域変異陽性例の検出法を検討中である。
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