研究課題
近年、抗腫瘍免疫において、主要なエフェクター細胞であるT細胞だけでなく、単球や樹状細胞、マクロファージなどのミエロイド細胞の状態も重要であることが報告されてきている。我々はこれまでに、最大18色を同時に染色できるマルチカラーフローサイトメーターを用いて、各種Lineage細胞とT細胞を中心とした免疫担当細胞ポピュレーション解析を進めている。本研究では、とくに解析が不十分であった単球・樹状細胞上のフェノタイプを解析するパネルを新規に作成し、バリデーションを行った後、健常人および固形がん患者末梢血中のリンパ球ポピュレーションを解析・比較した。その結果、健常人にくらべがん患者では、T細胞上の各種チェックポイント分子の発現が上昇していることが確認され、これまでの報告と一致していた。また、肺癌において相関が報告されているCD62L低発現細胞が、がん患者において上昇していることも確認できた。一方、ミエロイド系細胞では、がん患者においてPD-L1の発現が上昇していた一方、その他のチェックポイント分子のリガンドの発現には顕著な差は確認されなかった。以上の結果より、がん患者では循環リンパ球においてもT細胞が疲弊状態にある一方で、血液中のミエロイド系細胞には強い疲弊状態は確認されなかった。また、ミエロイド系細胞でもPD-L1の発現は、がん患者において高い傾向にあり、抗腫瘍免疫においてPD-1/PD-L1経路が重要な役割を担っていることが推察された。
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Cancer Immunol Res.
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10.1158/2326-6066.CIR-20-0989