研究課題
静岡がんセンターで施行中の網羅的がんゲノム解析研究であるHOPEプロジェクトにて同定されたhypermutator症例を対象として症例の予後に関連した免疫バイオマーカーの同定を行うことを目的とする。具体的には、まず1つ目の柱は、免疫応答関連遺伝子パネルの発現解析と腫瘍内浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte;TIL)の免疫染色による検討であり、2つ目の柱は、TIL細胞のT細胞受容体遺伝子(T cell receptor: TCR)レパトワ解析およびネオアンチゲンの同定を行うものである。これまでのHOPE登録約2,000例の腫瘍の中でhypermutator (総SNV数500以上)は、100例(5%)確認されており、大腸および胃がんが64例であった。平成30年度は、hypermutator症例のPD-L1およびCD8B遺伝子発現レベルに基づいて4つの免疫カテゴリーに症例を分類し、免疫応答遺伝子パネルの発現を各群で比較している。その結果hypermutator症例は、PD-L1+CD8B+群に55%が属し、PD-L1陽性群ではIL-6遺伝子の発現が高かった。具体的には、PD-L1+CD8B+に属するT細胞群は、GranzymeB遺伝子が、またPD-L1+CD8B-に属するT細胞以外群は、TREM1遺伝子がマーカーとなる可能性が示唆された。これらの成果は、2018年度に論文発表している(Kondou R, Akiyama Y, et al., Int J Oncol 54:219-228, 2019)。2019年度は、同定された遺伝子変異からネオアンチゲン候補のペプチドリストの同定とTCRレパトワ解析を進める予定であり、ネオアンチゲンの発現レベルとTCRレパトワ頻度の相関につき検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
2018年度には、HOPEプロジェクト登録2,000症例からhypermutator症例100例を選別し、免疫応答関連遺伝子の発現データの解析を施行した。PD-L1+CD8B+発現データより4つの免疫カテゴリーに分類し、PD-L1とIL-6の発現相関を示した(論文発表あり)。TILマーカーその他の免疫関連遺伝子の免疫染色用の標本作製も終了し、全体の約30%の染色を終了している。ネオアンチゲンの同定およびTCRレパトワ解析は、現在HLA-DNAタイピングを終了しており、今後本格的にネオアンチゲンの同定作業に入る所である。以上のまとめより2年目の評価としてはほぼ順調に進行しているものと考える。
2019年度は、同定された免疫関連遺伝子やTILマーカーの免疫染色を年度前半に施行し、後半はすでに解析した各症例のHLA-DNAタイピングにマッチさせてネオアンチゲンの同定をin silicoプログラムを利用して行う。並行して保存してある腫瘍由来のRNAを使用してhuman TCRプロファイリングキットによりTCRレパトワの解析を実施する。最終的に各免疫関連遺伝子の発現レベル、ネオアンチゲンとTCRレパトワの解析結果から各症例の予後と相関するマーカーにつき検討を実施する予定とする。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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