研究実績の概要 |
静岡がんセンターでは、2014年より手術にて切除された腫瘍組織を用いた網羅的な遺伝子解析研究(HOPEプロジェクト)を施行しており、whole exome sequencing (WES)とgene expression profiling (GEP)にて得られたデータを利用してmulti-OMICS解析を行っている。今回の研究では、登録された2,141例のがん患者において臓器別の腫瘍特異的な全SNV数500 [tumor mutation burden (TMB)20]以上を示したhypermutator108例 [SNV数:high TMB群 1997 vs low TMB群 94.5]を対象として免疫応答関連遺伝子パネルの発現解析と腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)のT細胞受容体遺伝子(TCR)レパトワ解析を行い、生存期間のデータを合わせることで症例の予後に関するバイオマーカーの同定に繋げて行く。これまでにhypermutator108例を対象とした免疫応答関連遺伝子パネルの発現解析については、Volcano plotを利用してPD-L1, TNFSF9, IL-6, GZMB, CD3Gの発現増加を認めており、炎症性シグナルの増大による免疫応答シグナルの活性化が惹起されているものと推察された。最終年度に実施予定のTIL細胞のTCR解析は、技術的な問題でまだ結果が得られていない。一方TMBレベル別の全生存期間解析では、有意な差は認められなかったが、免疫カテゴリー分類のA群(PD-L1+CD8B+)にあたるhypermutator腫瘍では、良好な予後の傾向が見られた。この結果よりhypermutationの現象のみでは良好な予後には、繋がりにくくネオアンチゲンに対するTILの誘導等のトリガーが必要であり、今後のTCRレパトワの解析が必要となると考える。
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