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2018 年度 実施状況報告書

糖鎖とNK細胞の相互作用を用いた切除不能腎癌に対する新規免疫療法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 17K07210
研究機関東北大学

研究代表者

川崎 芳英  東北大学, 大学病院, 助教 (80722256)

研究分担者 荒井 陽一  東北大学, 医学系研究科, 客員教授 (50193058)
佐藤 信  東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (70282134)
伊藤 明宏  東北大学, 医学系研究科, 教授 (70344661)
三塚 浩二  東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80568171)
泉 秀明  東北大学, 医学系研究科, 助教 (80722545)
嶋田 修一  東北大学, 大学病院, 助教 (80749218)
佐藤 琢磨  東北大学, 大学病院, 助教 (80804856)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード腎細胞癌 / DSGb5 / 糖脂質 / NK細胞
研究実績の概要

これまでの研究で、腎癌細胞上のDSGb5糖鎖抗原を制御することで、NK細胞の細胞傷害活性が賦活することも確認した。しかし、臨床上は、腎腫瘍全体として、DSGb5糖鎖抗原の発現量が小さい場合は、NK細胞を賦活化させた効果が非常に限定的なものとなってしまうことが予想された。このように、腎細胞癌のDSGb5糖鎖抗原の定量という課題に直面した。そこで、質量分析器による試料中の糖鎖抗原の定量に着手した。DSGb5糖鎖は糖脂質であり、これに含まれるスフィンゴ糖脂質はセラミド部分の脂肪酸および糖鎖の配列部分に多様性を有する。抗体は糖鎖をエピトープとして認識するため、脂肪酸配列については不明である。こうした分子種を識別して精密に同定しつつ、定量的に解析する手法として液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC/MS/MS) を用いた。試行錯誤の結果、腎癌細胞株培養上清において、炭素数16から26までの異なる脂肪酸鎖8種を測定対象に設定するとことで、DSGb5糖鎖を理論値からほぼ定量できると推測された。しかし、定量測定には標準物質が不可欠であり、標品としてのDSGb5糖脂質を入手する必要があった。
DSGb5糖鎖は7つの単糖より構成され、その生合成は複雑であり、現時点で市販されていないため、化学合成によりDSGb5糖鎖を生合成する実験系を構築した。現在、生合成は最終段階にある。さらに、合成過程で中間生成物であるMSGb5糖鎖などいくつかの有用な糖脂質も合成することができた。
以上により、DSGb5糖鎖が大量に化学合成できれば、多くの試料および検体の定量測定が可能となり、副次的に有用な糖鎖の合成も容易になると予想している。同時に施行していたin vitroおよびin vivoの実験、さらには患者検体を用いた臨床研究への応用が期待できる状況となりつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究過程において、腎細胞癌の糖鎖抗原の定量という課題が見つかったことにより、当初予定した進捗状況より、大幅に遅延することとなった。今回、ターゲットとしたDSGb5は糖脂質であり、標準物質が市販されておらず、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC/MS/MS)で測定するとしても、工夫が必要であった。しかし、Gb4糖鎖は標準物質として市販されており、Gb4 糖鎖をLC/MS/MSで測定することで、DSGb5の糖鎖部分の検出は可能と考えられた。DSGb5の脂肪酸配列には多様性があることが分かっていたが、これまでの文献から糖鎖の脂肪酸配列を炭素数16から26までの異なる脂肪酸鎖8種を測定対象に設定することで、DSGb5糖鎖の定量にめどがたった。
しかしながら、上記の方法は、理論値からの定量であり、実際の定量とは言い難い。そこで、DSGb5糖鎖の化学合成を試みたわけである。DSGb5のように長鎖の糖鎖の合成は複雑であり、非常に困難であったが、2から3の単糖を酵素反応により伸長することで、生合成の目途もたってきた。また、前述のように、中間生成物として、MSGb5糖鎖のような、こんごの糖鎖研究で有用な物質の生成に成功した。
以上より、本研究全体を俯瞰すると、試料および検体からのDSGb5糖鎖の定量という点で、より臨床応用に近づきつつあると考えられ、おおむね順調に進んでいるかと思われる。

今後の研究の推進方策

当施設の薬学研究室より助言およびご指導をいただいただきながら、DSGb5糖鎖の定量技術を確立しつつある。これにより、DSGb5糖鎖をターゲットとしたNK細胞の賦活化による新規免疫療法が有効な臨床像を、明らかすることが可能になったものと考える。なお、DSGb5糖鎖の化学合成技術については、近日中に論文発表および学会発表を予定している。
これまで通り、in vitroおよびin vivoでの実験を進めていくが、実験経験の豊富な補佐員を雇うことにより、これまでより短期間で多くの実験データを出し、試行錯誤する時間をもう少し増やしたいと考えている。
いづれにしても、研究計画通りに実験を進め、これまでの実験成果を論文等にて、着実に形にしていく方針である。今後も直面する課題については、実験補佐員やた薬学研究室の助言等も受け、少しずつ解決していく。以上のように、他研究室との連携を生かしつつ、想定した目標を目指して一歩ずつ推進させ、我が国の腎癌診療の発展に貢献したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

平成30年度に予定していた実験ほぼ施行したため、次年度使用額はごくわずかであった。ヌードマウス等の購入費としても次年度使用額を平成31年度の助成金と合わせて使用する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Value of global metabolomics in association with diagnosis and clinicopathological factors of renal cell carcinoma2019

    • 著者名/発表者名
      Sato Tomonori、Kawasaki Yoshihide、Maekawa Masamitsu、Takasaki Shinya、Saigusa Daisuke、Ota Hideki、Shimada Shuichi、Yamashita Shinichi、Mitsuzuka Koji、Yamaguchi Hiroaki、Ito Akihiro、Kinoshita Kengo、Koshiba Seizo、Mano Nariyasu、Arai Yoichi
    • 雑誌名

      International Journal of Cancer

      巻: 145 ページ: 484~493

    • DOI

      10.1002/ijc.32115

    • 査読あり
  • [学会発表] メタボロミクスを用いた腎癌細胞のSunitinib耐性獲得機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤友紀
    • 学会等名
      第28回泌尿器分子細胞研究会
  • [学会発表] Value of global metabolomics in association with diagnosis and clinicopathological factors of renal cell carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤友紀
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会

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公開日: 2019-12-27  

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