甲状腺がんはその組織型により大きく予後が異なる。そのうち、甲状腺未分化癌は予後不良で、既存治療にも不応である。本研究は、アンメットメディカルニーズの高い甲状腺未分化癌に対して新規治療法、治療薬を開発することを目標としている。H29年度、甲状腺未分化癌細胞株(8305C)において、文部科学省先端モデル動物支援プラットフォーム分子プロファイリング支援の阻害剤ライブラリーを用いて、レンバチニブの作用を増強させる併用薬の探索を行った。その結果、IRAK1/4 inhibitor Iが候補薬としてヒットした。IRAK1/4 inhibitor Iとlenvatinibの併用効果を4種類の甲状腺未分化癌細胞株において検討したところ、全細胞株で相乗的な細胞増殖抑制効果を認めた。フローサイトメトリーによる細胞周期解析の結果、IRAK1/4 inhibitor Iの併用はlenvatinibによるG2/M期での細胞周期停止を増強することが確認された。ヒト甲状腺未分化癌細胞をヌードマウスに移植したxenograft モデルにて、レンバチニブとIRAK1/4 Inhibitor Iの抗腫瘍効果を検討した。レンバチニブとIRAK1/4 Inhibitor Iの併用投与群はControl群、レンバチニブ群、IRAK 1/4 Inhibitor I群に比べ有意に腫瘍の増大を抑制することが示された。本検討により、lenvatinibによる抗腫瘍効果を増強する有望な化合物としてIRAK1/4 inhibitor Iが同定された。 また、研究代表者が開発中である新規HDAC/PI3K 二重阻害剤FK-A11も8305C細胞に強い細胞胞増殖抑制効果を示した。FK-A11はHDAC阻害、PI3K/AKT経路の抑制の他、MYCの発現を抑制することがwestern blottingによる検討で明らかになった。
|