研究課題/領域番号 |
17K07216
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 創世子 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (10649023)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | WT1 / T細胞受容体 / TCR avidity / memory |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、T細胞が発現するT細胞受容体(TCR)の抗原ペプチド-MHC分子複合体への反応の強さ(TCR avidity)に反映されない「何か」によってT細胞の分化の方向性や機能に違いが生じる可能性を示唆する実験結果を得た。しかしながらこれらの結果は、遺伝子背景や共刺激分子の発現が様々なprimary T細胞を用いて得た結果であるため、正確にTCR avidityを評価できていない可能性が考えられた。そこで、まず初めに、TCR avidityを正確かつ簡便に評価できるplatform細胞の作製を試みた。内在性TCR発現を欠いているJurkat-76細胞株にヒトCD8分子およびNFAT-GFPレポーター遺伝子を導入することで、PMA/ionomycin刺激によってGFPが陽性となるCD8+ 2D3細胞の作製に成功した。この2D3細胞に4種類の異なるWT1特異的CD8+ T細胞由来TCRを遺伝子導入し、WT1ペプチドに対する反応性をEC50で評価したところhigh avidity TCRとlow avidity TCRに分けられた。これらTCRをヒトCD8+ T細胞に遺伝子導入し、cytokine産生能および増殖能、細胞傷害活性によってeffector機能を評価したところ、high avidity TCRを発現するCD8+ T細胞のみがこれらeffector機能を示した。以上のことより、TCRのfunctional avidityを正確かつ簡便に評価できるplatform細胞の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞の分化の方向性を決定する因子を探索する上で、TCR avidityを正確かつ簡便に評価できるplatform細胞の作製は重要であると考える。作製したplatform細胞を用いることで、メモリー指向性TCRを規定する遺伝子の探索に簡便に用いることが出来る可能性があり、今後の研究を推進するために前進していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
CD8+ T細胞とCD4+ T細胞はその分化様式が異なることが考えられるが、TCR avidityに依存しないメモリー指向性TCRを規定する遺伝子を探索するためには、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞のいずれにおいても共通してT細胞のメモリーとしての性質(例えば長期生存)に関連する遺伝子を選択することが重要だと考えられる。したがって、優先的に、癌抗原WT1特異的CD4+ T細胞由来TCRのTCR avidityを正確かつ簡便に評価できるplatform細胞の作製を試みる。
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