研究課題/領域番号 |
17K07217
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
原田 守 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (50260716)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫療法 / 化学療法 / 加齢 / 集学的がん治療 |
研究実績の概要 |
1)マウス腎がんRENCA/CA9を用いたマウスモデルでは、RENCA/CA9は若年 (6-7週齢) BALB/cマウスにはマトリゲルを併用しても生着しなかったが、加齢マウスにはマトリゲルを併用しなくても生着した。若年BALB/cマウスでのRENCA/CA9の拒絶は抗CD4抗体の投与ではほとんど影響なかったが、抗CD8抗体を投与したマウスでは認められなくなったことから、RENCA/CA9腎がんに対するエフェクター細胞はCD8陽性T細胞でることが判明した。さらに、H-2KdまたはH-2Ldに結合してヒト由来アミノ酸配列を含む9-merペプチドをアルゴリズムに基づいて21種類準備し、RENCA/CA9を皮下接種した若年BALB/cマウスの局所リンパ節細胞を反応細胞としてIFN-g ELISAで評価したところ、1つの候補ペプチドを同定した。 2)RENCA/CA9担がん加齢マウスに対する抗がん剤cyclophosphamide (CP)と免疫チェックポイント阻害抗体療法(抗CTLA-4抗体 + 抗PD-1抗体)の複合免疫療法の効果を検証したところ、ほとんどの担がんマウスでがんが退縮した。加齢マウスにおいても単独療法と比較して複合免疫療法の有効性が高いことが確認できた。 3)申請者は、若年BLAB/cマウスに同系腫瘍CT26大腸がんを皮下接種し、その後、抗がん剤 cyclophosphamideと抗CTLA-4抗体の併用でほとんどのマウスのCT26が退縮することを報告したが、この実験系を加齢マウスモデルで実施した。その結果、加齢CT26担がんマウスでは併用効果が弱いことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の担がんモデル(CT26大腸がんモデル、RENCA/CA9腎がんモデル)を用いて、抗がん免疫応答の基礎的解析を実施しした。CT26大腸がんモデルにおいては、加齢担がん状態では、若年マウスで効果が認められた併用療法が不十分であることが判明した。一方、RENCA/CA9腎がんモデルでは、ネオ抗原といえるヒトCA9由来クラスI 分子結合ペプチドを同定した。これにより、ネオ抗原ワクチンと免疫チェックポイント阻害抗体療法との併用療法の集学的がん治療モデルの検討が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
1)マウス腎がんRENCA/CA9を用いたマウスモデルで、同定したネオ抗原であるCA9ペプチドによるがんワクチン療法、抗がん剤、免疫チェックポイント阻害抗体療法を併用した集学的がん治療モデルの検討を加齢マウスを用いて実施する。 2)、RENCA/CA9腎がんに対するエフェクター細胞はCD4陽性T細胞も関与している結果を得てるので、ヒト由来アミノ酸配列を含む15-merペプチドをアルゴリズムに基づいて候補ペプチドを準備し、ヒトCA9由来クラスII 分子結合ペプチドの同定を試みる。 3)加齢担がん生体では血中IL-6が認められ、抗がんT細胞応答が抑制されるので、抗IL-6抗体の投与が集学的がん治療による抗がん効果に与える影響を加齢マウスの腎がんRENCA/CA9モデルを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の実験計画は予定どうり実施できたが、2万円以下の未使用額が生じた。来年度に持ち越すことが可能であるので未使用にした。この未使用額は平成31年度の経費に組み込み、使用する予定である。 平成31年度の消耗品購入に充てる予定である。
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